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columnNo.3建物明け渡しの強制執行を行なう際の留意点

今回は、建物明け渡しの強制執行を行なう際の留意点についてお話しします。

賃借人の家賃滞納

建物明け渡しの強制執行を行使できないケース

建物明け渡しの強制執行とは、賃借人の家賃滞納などにより、建物明け渡しの訴訟を行ない、勝訴したにもかかわらず、賃借人が退去しない場合に強制的にその建物から出ていってもらうことのできる制度です。

しかし、その制度を行使できないケースがあります。それは、賃借人の代わりに、その部屋に第三者が住んでいた場合です。

例えば、オーナー様が賃借人Yに建物明け渡しの強制執行を行なおうと裁判所の執行官がその建物を訪問したところ、Yは不在で、第三者であるZが本件建物にいたとします。この際、Yに対する勝訴判決の効力はZに及ばない、ということです。

この点について、民事訴訟法に規定があります。

【民事訴訟法第115条第1項
(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)】
※一部抜粋

確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。

第1号
当事者
第2号
当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
第3号
前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
第4号
前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者

第2号から第4号の各号事由に該当しない限りは、確定判決の効力は、当事者のみにしか及びません。上記の例で言えば、判決の効力は、原則として当事者であるYにしか及ばないことになるのです。

同居しているかどうかで判決の効力が決まる

それでは、上記Zが第2号から第4号に該当することはないのでしょうか。

例えば、ZがYの妻で、同居している場合には、実務上、第4号の「前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者」に該当するとされています。Yに対する手続保証の機会(裁判を受ける権利)があった以上、別途手続保障を与える必要がなく、判決の効力をZに及ぼしても不都合はないと考えられています。

一方で、ZがYの単なる友人で、Yと同居しているなどの事情がない場合には、第4号には該当しません。つまり、判決の効力はZにまで及ばないこととなり、Zに対して強制執行を行なうことができなくなってしまうのです。

Zに対して強制執行を行なうためには、Zに対しても建物の明け渡しを求める裁判を提起したうえで、勝訴判決を得る必要があります。これは、オーナー様にとっては大きな負担となってしまいます。

建物の明け渡しを求める訴訟を提起する際の注意点

したがって、賃借人に対し建物の明け渡しを求める訴訟を提起する際には、次の点に注意する必要があります。

  1. 賃借人以外の第三者が本件建物に居住している可能性があるのか
  2. そのような第三者がいる場合に、その人物は賃借人と同居していると言えるのか

これら2点のことを防ぐためには、不審な第三者が建物内に出入りしていないか、常日頃から建物管理をきちんとしておくことが重要です。

昨今、民泊などによる第三者への部屋の貸し出しにより、本来の賃借人以外の第三者が建物に居住しているケースがみられます。このような観点からも普段から誰が建物内に出入りしているのか、できる限り把握しておくことが望ましいと言えます。

なお、強制執行にかかる費用は、賃借人の負担とされています(民事執行法第42条第1項)。しかし、実務上、一旦賃貸人が費用を立替えて支払い、賃借人に請求するのが一般的です。

そのため、強制執行の費用が想定を超えて高額となっただけでなく、賃借人からはその執行費用を回収することができず、結果としてオーナー様に多額の損失が発生することがあります。

明け渡し訴訟を法律事務所に依頼する場合は、執行費用としてどれほどの費用が想定されるのかを事前に問合せておくと良いでしょう。

建物の明け渡し

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