記事

  • 文字サイズ

【vol.8】金融庁が安易なアパートローン融資に警告

2017年11月30日

2015年に行われた税制改正によって、相続税の課税対象が広がりました。

これを機に、賃貸住宅の建設需要が高まり、アパートローンの申込みも急増しました。

融資額をみると、2016年は前年よりも20%以上高い3兆8,000億円となり、過去最高を記録しました。

アパートを建てると畑や更地より課税時の評価額が下がるため、相続税対策として注目されてきたアパート建築ですが、その一方で、空室率の上昇と建設会社が住宅を借り上げるサブリース契約に関する問題も発生しているようです。

その背景について解説していきます。

相続税対策

地方で急増するアパート建築の背景にある
「地銀の顧客紹介」

日銀によるマイナス金利の影響で新規融資先を見つけにくい中、積極的に貸出先を探す地方銀行。実はその大手地銀の一部が、顧客に対し節税対策としてアパート建築を提案、業者を紹介する見返りに(業者から)手数料を受け取っているという実態が金融庁の調べで明らかになりました。

この調査は近年、アパートローンの融資数を伸ばしている12の地銀が対象となりました。

結果、一部の地銀では、建築から管理などの賃貸経営に関する業務をすべてまとめて請け負う会社と「顧客を紹介する契約」を結び、「紹介手数料」を受け取っていることがわかりました。

さらにその契約の詳細を調べたところ、紹介手数料の相場は、アパート建築にかかる費用に、建築請負金額の約0.5~3%ということが判明しました。

つまり、仮に紹介手数料が3%だったとすると、請負金額3,000万円の場合、90万円を超える手数料を銀行側が受け取ることになります。

この90万円は、建築費に含まれることから、施主であるオーナー様の負担が重くなる可能性も考えられます。

「利益相反」に警鐘を鳴らす金融庁

銀行が業者から紹介手数料を受け取ることは違法ではありません。

ここで問題となっているのは「請負額(建築費)が高ければ高いほど銀行の利益になる」という状況です。

もし、銀行が紹介手数料のパーセンテージを高く設定するようなことがあれば、請負額(建築費)が増加し、すなわちアパート建築を依頼するオーナー様の負担が増えるということになります。

そうなると、銀行と顧客の間で「利益相反」になり得る可能性が高いと金融庁は判断しているのです。

金融庁はこの状況に対して、顧客のことを一番に考えているとはいえないとし、地銀側に顧客本位の原則に沿った是正を求め、状況を監視してきました。

その成果もあってか、日本銀行によって発表された2017年1-3月期における国内銀行のアパートローンの新規融資額は前年同期比0.2%減の1兆508億円となりました。

前年と比べて新規融資が減るのは2014年10-12月期以来、約2年ぶりのこと。金融庁の監視強化の影響があるのかもしれません。

金融庁

不動産投資・賃貸経営は慎重に

状況が多少是正されたとは言え、まだまだ油断は禁物です。前年同期比で減額しているとは言え、四半期の新規融資額が1兆円を超えたことは、今回を除くと過去2回しかありませんでした。依然として、新規融資額は高い水準を維持していると言えるでしょう。

人口減少社会の中で、増え続ける「相続税対策のアパート建設」。これは、体力の弱い地銀が積極的に融資を行なうことにより発生した「ミニバブル現象」ではないか、と懸念する声もあります。特に、地方のように人口が減り続けている地域では空室率が上昇する可能性が高く、ローンの不良債権化にもつながりかねません。

節税対策で始めた賃貸経営によって負債を増やしてしまっては本末転倒です

新たにアパートを建築するのであれば、こうした状況を把握しておき、銀行や業者をしっかりと選ぶ必要があると言えるでしょう。

ページの先頭へ