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【vol.13】貸家着工戸数、8年ぶりの高水準!

2018年1月24日

国土交通省が発表した2016年度の建築着工統計調査によると、共同住宅や戸建てなどの貸家の新設住宅着工戸数は、前年度比10.5%増の41万8,543戸となり、5年連続で増加したことがわかりました。貸家が40万戸を超えたのは、2008年以来、8年ぶりのことです。

主要3都市とその他地域の貸家の増加率は、前年度比で、首都圏が10.1%増、中部圏が9.6%増、近畿圏が9.5%増、その他地域が11.5%増となり、大都市圏以外の伸び率が高いことがわかりました。中でも増加率の高かったのが、長野県の36.8%、富山県の36.7%、徳島県の32.4%、福島県の30.7%でした。

次に貸家以外の内訳をみると、持家が、前年比3.1%増の29万2,287戸。分譲住宅が、前年比3.9%増の25万532戸となりました。全体の新設住宅着工戸数は、前年比6.4%増の96万7,237戸で、2年連続の増加となりました。
今回は、貸家の増加率が持家と分譲住宅の増加率を大きく上回りました

建築着工統計調査報告/国土交通省

(出展:国土交通省「建築着工統計調査報告」)

貸家の増加を後押しした要因とは

貸家の新設着工戸数が伸びた要因のひとつに、2015年1月に施行された、相続税にかかわる税制改正があります。相続税は遺産総額が一定額(基礎控除額)を超えた場合に課せられます。基礎控除額を超えなければ課税の対象にはなりませんが、税制改正により基礎控除額が引下げられたことから、これまでよりも課税対象者が増えることになり、課税対象者の割合が、約4%から約6%となることが財務省の試算で明らかとなりました。

基礎控除額は、「5,000万円+(法定相続人の数×1,000万円)」だったものが、改正後には、「3,000万円+(法定相続人の数×600万円)」へと大きく引き下げられ、課税対象者が増えたのです。

そこで、着目されるようになったのが「賃貸経営」です。これは、相続税や贈与税の計算基準となる「相続税評価額」を出す際、現金や株よりも不動産の方が低い実勢価格で評価され、節税効果があるからです。さらに、不動産の中でも貸家の場合は、借家人が住んでいて、簡単には売ったり買ったりできないので、通常の不動産よりも評価額が下がる仕組みとなっています。最終的に、現金と賃貸物件を比較した場合、約40%もの節税効果が期待できる計算になります。

貸家イメージ

具体的な評価基準は次の通りです。
現金や有価証券などの場合は額面通りですが、不動産で相続すると、建物部分は固定資産評価額の50%、土地部分は公示価格(路線価)の80%程度で評価されます。そして、それが賃貸物件である場合は、建物が70%、土地が60%まで評価額が下がります。
以上の理由から、相続税の基礎控除額引下げをきっかけに賃貸経営を始める人が増えたというわけです。

貸家の増加を後押ししたもうひとつの要因としては、低金利政策が挙げられます。日銀によるマイナス金利政策によって、賃貸住宅の建築や購入のための融資商品であるアパートローンにおいて、持家を取得する場合の住宅ローン同様、金利の低下傾向が続いているからです。
日銀が2017年2月に発表した貸出先別貸出金によると、2016年の金融機関による不動産融資は前年比15.2%増の12兆2,806億円となりました。
これは1977年の統計開始以来で過去最高の金額でした。

貸家が増えることで弊害も浮き彫りに

人口減少と貸家の増加が重なったことが、空き家数の増加に追い打ちをかけています。総務省が7月に発表した1月1日時点の住民基本台帳に基づく人口動態調査によると、日本の人口は前年比30万8,084人減の、1億2,558万3,658人であることがわかりました。8年連続の減少で、減少幅が30万人を超えたのは、1968年の調査開始以来初めてです。

また、総務省の住宅・土地統計調査では、1983年に183万戸だった貸家の空き家数は、2013年には429万戸まで膨れ上がっていることがわかりました。この問題は貸家だけに留まりません。貸家を含む全住宅の空き家の数も820万戸にまで達し、より深刻な状況となっています

せっかく相続税額を低く抑えることができても、その後の賃貸経営で空室が続けば、ローンの返済や税金の支払いにも支障をきたすようになりかねません。
一時しのぎの相続税対策としてだけではなく相続後の計画もしっかりと見据えた賃貸経営が重要になるでしょう。

相続後の計画を考える イメージ

 

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