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【vol.28】高齢化社会への対応進める業界団体「不動産後見取引士」。「業務委任状」がビジネスチャンスにつながる可能性も

2018年5月16日

厚生労働省によれば、認知症患者数は2025年には700万人を超えると予想されています。

これは高齢者(65歳以上)の5人に1人が認知症になる計算です。超高齢社会の今、不動産取引の相手が認知症などで判断能力が十分でないと懸念されるケースが後を絶たず、各業界の団体では、スムーズに取引ができるよう資格制度や書式類を揃え時代の流れに備え始めています。

認知症への対応はこれまで敬遠されがちだった問題ですが、苦手意識を払拭すればビジネスチャンスに変えることもできると注目されており、今回は関係する2つの事例をご紹介します。

委任状

「不動産後見取引士」の資格講習会は定員を超えるほどの人気ぶり

2017年8月、全国住宅産業協会(以下、全住協)の主催により「不動産後見取引士」の資格講習会が都内で開催されました。

この制度は、超高齢化が進む中、不動産取引に関わる人物が認知症等で判断能力を発揮できないと懸念されるケースが増加しつつある現状を打開するため、全住協と東京大学の連携によって創設されました。

判断能力が不十分な人物が不動産取引に関わってそのまま契約が結ばれると、契約解除等のトラブルの原因になることが想定されます。

このため、円滑な取引には判断能力が不十分な人物に対して適切なサポートを行なうための人材育成が必要だと考えられているのです。

こうした制度が整えば、所有者が認知症になったため「塩漬け」状態になっていた不動産が市場に出てくる可能性もあり、ビジネスチャンスになるといえます。

同制度では、2日間の講習を受けてテストに合格すると、同資格認定証が付与される仕組みで、講習内容は高齢社会の現状と成年後見の社会的背景」「後見制度の基礎」「取引や支援における留意点」等です。
講習への申し込みは定員を超えるほどの人気だといいます。

講習会イメージ

多くの方々に使用してもらえるよう工夫

日本賃貸住宅管理協会(以下、日管協)では2016年5月に「オーナーの認知症に備えた管理業務委任状書式」を作成しました。

通常、管理業者は、賃貸借契約の締結や退去後の原状回復工事、賃料などの契約条件変更などについて物件オーナー様に意思確認をするのが一般的な日常業務といえます。

ところがオーナー様が認知症になってしまうと、そういった業務が進まず、入居者様にも迷惑をかけてしまうことになります。

そのため、日管協では、前もってオーナー様が代理人(息子や娘など)を指定するという、管理に特化した「委任状」の書式を用意しました。

この書式は、氏名のほかに委任事項や物件名を記入するシンプルな内容となっており、万が一、オーナー様の判断能力が低下した場合であっても、管理業者は代理人との間で業務に必要な意思確認が可能です。

今まで、物件管理を任せるにあたっては、民事信託といった手段もありましたが、日管協によれば「実務面を考えると委任状の方が管理業者とオーナー様の双方にとって取り組みやすいので、紙1枚で簡潔にまとめ、多くの方々に使用してもらえるよう工夫しています」とのこと。

委任状の書式や記入例は日管協のホームページからダウンロードでき、冊子等も作成されてきましたが、管理業者だけでなく物件オーナー様からも問い合わせがあるといいます。

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