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【vol.33】「IT重説」の導入でどう変わる? 貸す側、借りる側の利便性がアップ

2018年7月13日

2017年10月から「ITを活用した重要事項説明」(以下、IT重説)が解禁されました。

前回の記事「2017年10月からスタートした『IT重説』って何?」でも述べたように、IT重説を導入することで、お客様は不動産会社に出向く必要がなくなり移動にかかる時間や費用が節約できると同時に、不動産会社も業務を効率化することができます。

このようなメリットがある一方で、しっかり理解してもらえるのだろうか?といった不安や、IT機器に抵抗のある人にとってはややハードルが高いのではないか?という声も聞こえてきます。しかし、まずは不動産会社が積極的に実施するところからすべては始まります。

IT重説

実施者(取引士)・顧客ともに好感触

そこで今回は「IT重説って実際はどんな感じ?」という疑問をお持ちのみなさまに、2015年8月から1年5ヵ月間行なわれたIT重説社会実験における「IT重説実施直後のアンケート結果」(下図)を参照しながら、その実像をお伝えします。

IT重説を受けた「顧客のアンケート結果」

まずは、IT重説を受けた顧客のアンケート結果から見ていきましょう。
「IT重説を受ける前に物件の内覧をしたかどうか?」について、「内覧した」が83.2%、「内覧しなかった」が16.8%となりました。不動産会社にもよりますが、IT重説の導入により、内覧も含めすべてオンライン上で行なうことも可能です。
しかし、オンラインだけで済ます人は極めて少ないといえそうです。

【 事前の内覧の有無 】

事前の内覧の有無

① 内覧した
② 内覧しなかった

「IT重説における聞き取りやすさ」について尋ねたところ、利用者の82%が「全体を通じて十分聞き取れた」と回答した一方で、「一部聞き取りにくい」と「全体を通じてやや聞き取りにくかった点があった」とする回答も18%ありました。

聞き取りにくかった理由としては、「取引士の声に雑音が入ったり、途切れたりした」との回答が90%を占めました。これは、IT重説特有の問題点だといえそうです。

【 IT重説における聞き取りやすさ 】

IT重説における聞き取りやすさ

① 全体を通じて十分に聞き取れた

② 一部聞き取りにくいときがあった

③ 全体を通じてやや聞き取りにくかった

【 IT重説における聞き取りにくかった理由 】
※十分に聞き取れたとした方以外のみ回答

IT重説における聞き取りにくかった理由

① 取引士の声に雑音が入ったり、途切れたりした

② その他

・最初、声が小さく聞き取れないときがあったが、音量をあげたら十分に聞こえた。

・雑音ではないが、時々音声が小さくなるときがあった

IT重説が便利であると思う点については、利用者の90%が「店舗を訪問する必要がない点」を挙げました。店舗を訪問しなくて良いのはIT重説ならではのメリットといえます。

反対に、IT重説が不便であると思う点については、41.6%が「特にない」、次いで「機器やシステムを使うための環境や知識がないと、準備等の負担が大きい点」を挙げる回答が32.7%を占めました。

【 IT重説が便利であると思う点 】

IT重説における聞き取りやすさ

① 店舗を訪問する必要がない点

② ソフトウェアなどを用いて図示しやすい点

③ 対面上感じる威圧感や緊張感がない点

④ 特にない

【 IT重説が不便であると思う点 】

IT重説における聞き取りやすさ

① 説明の相手方と取引士の各々が見ている図面について、同一のものかを確認しにくい点

② 画面を意識的に見なければ、取引士の姿が確認できない点

③ 機器やシステムを使うための環境や知識がないと、準備等の負担が大きい点

④ 身分証の提示など、個人情報を提示しなければならない点

⑤ 特にない

⑥ その他

・スマートフォンの場合、手でずっと持っていなければいけないので不便に感じた。

・タイムラグが生じること。

・LTE回線を使ったため、通信料などが心配である。

・目の前にスペースがないと資料を探すのが大変であった。

なお、過去に対面重説を受けた経験がある顧客に、「IT重説と対面での重説を比べてどちらが説明内容を理解しやすいか?」を聞いたところ、対面重説のほうが比較的理解しやすいという回答が30.8%あったものの、「理解のしやすさは同程度である」との回答が48.1%あったことから、両者ともあまり大きな差はなかったようです。

【 対面での重説とIT重説の比較 】

対面での重説とIT重説の比較

① IT重説の方が対面での重説より、理解しやすいと思う

② IT重説の方が対面での重説より、比較的理解しやすいと思う

③ IT重説と対面での重説の理解しやすさは、同程度である

④ 対面での重説の方がIT重説より、比較的理解しやすいと思う

⑤ 対面での重説の方がIT重説より、理解しやすいと思う

IT重説を実施した「実施者(取引士)のアンケート結果」

次に、実施者(取引士)へのアンケート結果を見ていきましょう。
「IT重説中に機器のトラブルがあったか否か?」について聞いたところ、27.8%で生じたことがわかりました。

トラブルの内容としては、音声トラブルが43.9%と最も多く、映像トラブルが約24.4%、 回線系のトラブルが14.6%という内訳になりました。

【 機器のトラブルの有無 】

機器のトラブルの有無

① トラブルがなかった
② トラブルがあった

【 機器のトラブルの具体的内容 】

IT重説における聞き取りやすさ

① 画面が映らない等の映像トラブル(一時的な場合を含む)

② 音が聞こえない等の音声トラブル(一時的な場合を含む)

③ インターネットにつながらない等の回線トラブル(一時的な場合を含む)

④ 端末が利用できない等の端末トラブル

⑤ その他

・先方の音声が最初聞こえていなかった。当社のパソコン設定に問題があった。

・こちらの音声が聞き取りにくいとのことでしたのでイヤホンで対応してもらった。

・画面が動かなかった。場所を移動して行なった。(室内から車内に)

・相手のネット回線スピードが遅く画像がスムーズにつながらなかった。

また、IT重説における説明のしやすさ(初回時)については、「対面での重説の方が説明しやすい」とする回答が66.0%、「同程度である」とする回答が31.9%、「IT重説の方が説明しやすい」とする回答がごく一部(2.1%)でした。      

しかし、重説を2回以上実施した後(最後に実施したIT重説実施後)は、「同程度である」とする回答が約 65.5%で最多となり、「対面での重説の方が説明しやすい」と「対面での重説の方が比較的説明しやすい」とする回答が24.1%、「IT重説の方が説明しやすい」とする回答が10.3%となりました。

このことから、場数を踏んで慣れれば慣れるほど、説明しやすくなるということが伺えます。

【 IT重説と対面での重説の比較(説明のしやすさ) 】

初回時
初回時
2回以上実施の最終時
2回以上実施の最終時

① IT重説の方が対面での重説より、説明しやすいと思う

① IT重説の方が対面での重説より、比較的説明しやすいと思う

② IT重説の方が対面での重説の説明しやすさは、同程度である

③ 対面での重説の方がIT重説より、比較的説明しやすいと思う

④ 対面での重説の方がIT重説より、説明しやすいと思う

※全数を対象とすると、複数回実施している取引士の意見が反映されやすくなるため、全ての取引士が最初にIT重説を実施した際の調査結果と、2回以上実施した取引士における最後にIT重説を実施した際の調査結果を比較した。

(参照:IT重説社会実験[平成28年1月実施文まで]におけるIT重説実施後のアンケート結果)

IT重説を積極的に実施するかどうかが今後の鍵

以上のアンケート結果を見る限りでは、大きな支障もなく、さらに目立ったトラブルもなかったことから、顧客と実施者(取引士)双方にとって好感触だったようです。

しかし、国土交通省の発表によれば、登録業者303社のうち、社会実験期間中にIT重説を実施したのはわずか53社であったことが判明しました。つまり、登録はしたものの実施していない企業が大半だったということです。また、IT重説の実施件数は1071件でしたが、このうち1社だけで619件実施され、実施件数の多い上位3社で全体の80%以上を占めていることもわかりました。

このような結果から推測すると、IT重説が解禁されたからといって、一気に広まるかどうかについては疑問が残ります。しかし、そのような状況だからこそIT重説を率先して行なうことで、未実施の不動産会社との差別化になるともいえます。

IT重説

なお、今回の社会実験では、実施された1071件のうち1069件が賃貸取引で占められ、法人間の売買取引はわずか2件でした。このため、今回の解禁は「賃貸借契約」に限られ、「法人間の売買取引」での導入は見送られました。また、「個人間の売買取引」については、今後の検討課題となっています。

国土交通省が9月に発表した「賃貸取引に係るITを活用した重要事項説明実施マニュアル」には、IT重説の概要、宅建業者・実施者(取引士)が遵守・留意すべき事項、手順、工夫事例など、ひと通りのことが網羅されています。一読すれば、ポイントをおさえながら一連の流れをイメージすることができるでしょう。

また、不動産会社向けにIT重説について解説を行なうセミナーなども全国で開かれています。業務に関連のある方は、そのような場に参加して疑問や不明点などをぶつけてみるのも良いでしょう。

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