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【vol.37】国土交通省、民法改正に伴い「賃貸住宅標準契約書」を改訂

2018年9月12日

2017年5月に民法改正法案が成立したことを受けて、2018年3月、国土交通省(以下、国交省)では「賃貸住宅標準契約書」を改訂しました。

民法の改正には3年程度の周知期間を置くため、その施行は早くても2020年になると言われていますが、早めの施行を求める意見もあることから、国交省ではいち早く改訂に踏み切りました。

賃貸住宅標準契約書

今回の民法改正により、賃貸借分野で変化した点には大きく分けて4つのポイントがありますが、国交省による「賃貸住宅標準契約書」では、これらの点に沿ってしっかりと改訂されています。
今回はその4つのポイントをご説明します。

4つのポイント

1. 敷金の返済義務について

改正民法では、敷金についてしっかりと定義がなされ、その条件も明文化されています。

それに基づき、賃貸住宅標準契約書 第6条では「借主の債務不履行がある場合、貸主からは敷金を債務の弁済に充てることができるが、借主からは敷金を賃料などの支払債務の弁済に充てることを請求できない」としています。

また、物件の明渡しがあった場合には「貸主は借主の債務不履行額を差し引いた額を借主に返還しなければならない」と明記しています。

つまり、敷金は、物件の明渡しまで貸主の判断で弁済等に充てることができるものですが、物件明渡しの際には、債務不履行が無い限り「返還」しなければならない物だということが明記されました。

敷金の返済義務

2. 連帯保証人制度について

改正民法では、個人の保証人は極度額を限度として責任を負うこと、極度額を定めない保証契約は無効になることが規定されています。

ここでいう保証の範囲には家賃元本、遅延損害金、原状回復費用等が含まれ、極度額はこれらを反映した額となります。

また、連帯保証人の請求があった場合、改正民法では、貸主は賃料などの支払状況や滞納額等に関する情報提供義務があることも定められています。

もし、借主が継続的に賃料の支払いを怠っているのに、貸主が保証人に通知しないまま借家契約を更新するような状況があった場合、保証債務の履行請求が信義誠実の原則に反し、否定されるケースもありえますので、貸主には保証人への積極的な情報提供が望まれることになります。

これらを踏まえて、改訂された賃貸住宅標準契約書では連帯保証人が負担する限度額を極度額として定め、頭書と記名押印欄に記載することで、連帯保証人が契約時に極度額を認識できるようにしています。

連帯保証人制度

3. 居室設備などの一部が減失した場合の賃料減額について

一部減失の場合の賃料減額については、これまでは商慣習として「(賃料減額を)請求することができる」と認識されていたものを、改正民法では「減額される」と当然に減額するものとしています。

そのため、改訂された賃貸住宅標準契約書では、借主に責任がない場合、使用不可の部分の割合に応じて賃料が減額されるとし、「内容は貸主と借主の間の協議に委ねる」としています。

ただし、国交省では賃貸住宅標準契約書の条文において「一部減失の程度や減額割合については、判例等の蓄積による明確な基準がない」として適正な減額割合や方法(賃料設定を変更する、あるいは賃料は現状維持で一定期間の免除を行なうなど)について合意の上決定することが望ましいとしています。

そのため、国交省ではこれらの点について実務上参考になるケースや判例等の事例集を準備しているようです。

一部減失

4. 契約期間中の修繕について

改正民法では「借主に責任がある場合、借主が自分の費用で修繕する」のが原則とされています。

一方、建物の管理という面では「修繕の実施主体を全て貸主」にし、その上で借主に責任がある場合の修繕については、借主に費用負担を求めるのが合理的と判断されています。

この場合の借主の負担費用は「借主の故意、または過失によって生じた損害に基づく賠償責任」の意味を持つものと扱われています。

また、「明渡し時の原状回復」についても、改正民法で明文化され、経年劣化については貸主が責任を負うとしていますが、過去の判例に基づいた定義であり、実務上変化はないといえるでしょう。

つまり、借主は通常使用で生じた損耗と経年変化を除き、原則として原状回復を実施しなければなりませんが、逆にいえば、借主の責任ではない損耗については、原状回復を不要としています。

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