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columnNo.22相続税の税務調査から学ぶ!
相続税対策と注意点

相続税の申告には約9件に1件という高い割合で税務調査が入ることをご存知でしょうか。

また、調査を受けたうち約82%については申告漏れ、そして追徴課税がされています。

ここでは、税務調査がどのようなものか、そして知っておきたい対処法をご紹介します。

相続税の申告漏れを指摘されやすい財産

税務調査が入ると必ずチェックされ、申告漏れを指摘されやすい財産があります。

下表は、平成28年事務年度申告漏れがあった財産の種類と財産額です。

 
種類 財産額(億円)
現金・預貯金等 1,070
有価証券 535
土地 383
家屋 56
その他 1,189
合計 3,233
平成28年事務年度申告漏れがあった財産の種類と財産額

【引用:国税庁発表 平成28年事務年度における相続税調査の状況について】

このように、現金・預貯金等と有価証券が約5割を占め、つづいて土地・家屋となっています。土地については「土地の評価ミスが主な原因」と税務署が発表しています。

また、相続税の税務調査は、金融資産に集中して行なわれています。

税務調査までの流れ

① 市区町村からの死亡通知

人が亡くなると死亡の事実を知った日から7日以内に「死亡届」を市区町村役場に提出しなければなりません。

市区町村役場は「死亡届」を受け取ると、固定資産課税明細書と共に税務署へ通知します。

② 課税要否の検討

税務署はここで死亡を確認し、相続人の情報や不動産に関する情報、その他保険会社等からの保険金の支払調書、配当金の支払調書、国外送金等調書、KSKシステム(全国全ての税務署をネットワークで結び、個人が行なっていた確定申告の内容や法人との取引などの納税者情報を一元管理できるシステム)により相続税がかかるか否かを調べます。

③ 調査要否の検討

税務署は相続税申告書が提出されると「② 課税要否の検討」の情報と照合し、相続財産に漏れが無いか等を調べます。

また、被相続人と、その家族全員分の金融機関等の取引を10年間分照会し、株などにも漏れが無いか調べます。

税務署は、名義預金がある可能性もあるので被相続人の口座だけでなく親族の口座も確認しており、銀行や証券会社から過去の入出金等のデータを取り寄せることが出来るため、不審な入出金が無いか全てチェックしています。

税務調査の流れ

実際に調査に入るまでに税務署では事前調査を行ない、問題点の抽出をしています。指摘事項、問題点があれば税務調査になります。

つまり税務調査が入るということは念入りに事前調査した結果、何かしらの指摘事項を掴んでいるということです。税務調査は、下記の流れで実施されます。

① 相続人と相続税の申告書に署名押印した税理士に、税務調査の日程について、税務調査官から電話で打診があります。

② 調査場所は被相続人の自宅を指定されることが一般的です。その際、指定された日時の都合が悪い時は、変更を申し出ても問題ありません(税理士と相談の上、後日回答することをお勧めします)。

③ 自宅での調査は、1~2日間行なわれます。問題点があればそれらを整理し、どの項目について修正申告等の対象とするかを確認する為に、後日、税務署に赴き擦り合せのための話し合いが行なわれるケースが多いです。

【調査の一例】

■調査1日目

調査官の来訪 二人以上の調査官が指定の日時に来訪します。
身分証明書の提示 調査官は身分証明書を提示することが義務付けられています。
世間話などから調査開始 税務職員は世間話の中からでも調査に必要な情報収集をしています。
昼食のための休憩
金融機関の賃金庫の確認 事前に相続人が賃金庫の中を整理する前に申告漏れ財産のチェックをします。
トイレを借りる振りをして室内の状況をさりげなく観察 銀行や証券会社の名前の入ったカレンダーやタオルがないかチェックします。
重要書類等の保管場所の確認 日頃から金庫の中など重要書類の保管場所には無用な誤解を避けるために、メモや計算書類などはきちんと整理しておきましょう。
印影の確認 名義預金等の判定を行なう際の材料となります。
相続人の氏名・職業・筆跡の確認 被相続人の預金等の入出金伝票や重要取引の書類の筆跡突合などに役立てます。

■調査2日目

香典帳等の確認 香典帳、芳名録、年賀状、電話帳、日記帳その他のメモ類があればそれらを確認します。
事前に調査した項目の中で確認すべき事項について確認
問題点の絞り込み 問題点をピンポイントで絞り込み、質問と証拠資料で問題点を解消していきます。
預り資料の確認 2日間の実地調査で確認し切れなかった部分などについては、相続人の承諾を得たうえで、税務署内へ持ち帰り引き続き調査が行なわれます。

※上記は一例です。調査の手順はケースにより異なります。

手順にあるように調査1日目の午前中には「世間話」とあります。ここでは被相続人の生い立ちや職歴、趣味についての質問がされます。

相続税には関係なさそうな質問と思いきや、実はその質問一つ一つには以下のような狙いがあるのです。

【質問とその狙い】

質問 狙い
被相続人の学歴・職歴・趣味・社会的地位について 職業等から所得がいくらあったか、所得に見合った財産が申告されているか
過去の住所について 本籍地・過去の住所地等における不動産の所有事実の確認
過去の不動産の売却について 譲渡代金の使途を追及し、申告漏れがないかの確認
取引金融機関について 申告漏れ金融機関の有無を確認
過去における多額の金銭の入出金について 入金については資金源、出金については化体財産の計上漏れはないか
相続開始前後の入出金について 手持現金及び隠蔽財産はないか
相続人・家族の状況について 家族の状況を確認し、名義預金の帰属を検討
被相続人の亡くなる前の状況について 亡くなる直前の養子縁組や財産の異動は有効か否かの確認
毎月の家計費について 日々の出金の内、生活費を上回る部分について、他への財産の異動や漏れの確認
相続人に名前を書いてもらう・通帳の印鑑の確認 名義預貯金の検討
配偶者名義の預金について 配偶者に収入がない場合には、被相続人の財産ではないか

上記の質問の中でも、名義預金(配偶者や子・孫などの名義の預金で実際にはそれ以外の真の所有者がいる預金)や手元現金(亡くなる直前に引き出されたお金)をきちんと申告しているかどうかが最も重要なポイントになります。

税務調査前日までの対応策

調査が入ることになった場合、何を聞かれるのだろう、多額の税金を取られるのではないだろうかと不安になる方がほとんどだと思います。

税務調査に落ち着いて対応する為に、準備をすることをお勧めします。

① 相続税の申告書、及び基礎資料の準備

② 税理士との打ち合わせ

③ 自宅全体の整理

④ 重要書類の整理

⑤ 印鑑の整理

⑥ 貸金庫内の整理(調査の連絡の後に貸金庫を開けたという記録に税務署は注目します)

⑦ 高額な調度品などの整理

事前の対策が重要

相続税の税務調査は、きちんとした申告をしていれば全く怖くありません。

特に申告漏れが多い金融資産の申告に気を付けていれば、修正申告で追徴課税をされ多額の税金を払う可能性は低いでしょう。

その為には元気なうちに相続専門の税理士に依頼をし、土地活用等でしっかり節税をすること、そもそも調査が入りにくい相続税申告を提出すること、名義預金を指摘されないよう正式な贈与契約書を作成する等の事前の対策が必要です。

税務調査で嫌な思いをしない為にも不安な方は専門家に一度相談されることをお勧めします。

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