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土地オーナー様のなかには、土地活用の必要性を感じてはいるものの、最初の一歩を踏み出せないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。土地を放置している状態は「固定資産税を払っているだけ」であることは理解していても、これだと思える土地活用法が見つからず、手つかずの状態が続いているというケースもあるかもしれません。
しかし、これまで土地オーナー様の選択肢になかった土地活用法によって状況を打開できる可能性もあります。例えばビル経営などは、多くの土地オーナー様が選択肢として考えていない土地活用法ではないでしょうか。ビル経営とは、土地オーナー様が自身の土地にビルを建てて、そこに企業の事務所や飲食店、セレクトショップ、医療機関等が入居する事業です。そして、土地オーナー様はテナントとして入居する企業や個人から賃料を徴収します。
ただ、このビル経営の仕組みを聞いただけではピンとこない土地オーナー様も多いでしょう。今回は、「ビル(テナントビル)」を建設して土地活用する場合のメリット・デメリットや、ビル経営に向いている土地などについて詳しくご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
目次
ビル(テナントビル)を建てるメリット・デメリット

土地オーナー様がビル経営に乗り出すメリットとデメリットを考えてみましょう。
メリット
土地オーナー様がビル経営をはじめるメリットとしては、次のような点が挙げられます。
- ① 賃料を高く設定できる
- ② 収益性が高い
- ③ 節税効果を期待できる
- ④ 転用しやすい
- ① 賃料を高く設定できる
- ② 収益性が高い
- ③ 節税効果を期待できる
- ④ 転用しやすい
ひとつずつ詳しくみていきましょう。
① 賃料を高く設定できる
ビル経営では、テナントとして入居する借主(企業や店舗)から賃料収入を得る訳ですが、その賃料は、賃貸マンション・アパートの家賃より高く設定できることが一般的です。
そのため、ビル内のテナントが満室になればオーナー様の収入も大きくなるでしょう。
② 収益性が高い
賃料を高く設定できるということは、土地活用の収益性が高くなることを意味します。つまり、高収益を上げられるということです。
では、なぜビル経営では賃料を高く設定できたり、収益性が高くなったりするのでしょうか。それは、商用利用が可能だからです。例えば、1部屋20平方メートルの賃貸ワンルームマンションがあったとします。この場合、20平方メートルは1人でしか使いません。また、入居者様はその20平方メートルを使って収益を生み出す訳でもありません。
一方、1室50平方メートルの貸しビルがあったとします。その1室を5人で使えば、1平方メートル当たりの利用人数は賃貸ワンルームマンションより多くなります。つまり、ビルの延べ床面積をより効率的に使っているということです。しかも、テナントとして入居している企業や店舗などは50平方メートルを使って収益を生み出すので、高い賃料を支払う余裕も生まれるのです。
③ 節税効果がある
土地オーナー様がこれまで使っていなかった土地でビル経営をはじめると、相続税と所得税の2つで節税効果が生まれます。
<相続税の節税効果>
ビル経営では、相続税の節税効果が生まれます。例えば2億円の「現金」を相続するのと、2億円の「ビル(建物)とビル経営(事業)」を相続するのでは、後者のほうが相続税は低くなります。それは、ビル(不動産)の評価額が、建設コストの6割ほどにまで減額されるからです。
また、ビルを建てた土地の相続税評価は、更地や駐車場よりも下がるのが一般的となっています。つまり、現金を相続したり更地や駐車場を相続したりするより、ビル経営を相続したほうが相続税は低くなるということです。
<所得税の節税効果>
土地オーナー様が会社員で、副業としてビル経営に着手したとします。その際、会社員として得られる所得とビル経営の所得を通算(=損益通算)することが可能です。
また、通算後に税務上の所得が会社員としての所得より少なくなれば所得税が減ります。赤字額によっては通算後の所得が0円になったりマイナスになったりしますが、その場合、所得税は課せられません。
④ 転用しやすい
ビルと言う建物には、転用しやすいというメリットがあります。企業の事務所が入っていたビルを改装すれば飲食店用のビルにできますし、その逆も可能です。
つまり、その土地がある地域経済の情勢に応じてビル経営をアップデートできるということです。
デメリット
ビル経営のデメリットとしては、次のような点が挙げられます。
- ① コスト高
- ② 競争にさらされやすい
- ③ 経営リスクが高い
- ④ 景気に左右されやすい
- ⑤ 固定資産税が高くなる
- ① コスト高
- ② 競争にさらされやすい
- ③ 経営リスクが高い
- ④ 景気に左右されやすい
- ⑤ 固定資産税が高くなる
ひとつずつ詳しくみていきましょう。
① コスト高
ビルの建設コストは、賃貸マンション・アパートより高くなります。ビルの場合、ネット環境、電気容量、空調設備、防犯設備、防音設備などを、賃貸マンション・アパートよりも充実させなければならないからです。これはそのまま、土地オーナー様が負担する初期投資の額に跳ね返ってきます。
また、ビルの維持費も賃貸マンション・アパートよりも高額になるでしょう。ビルのテナントに入っている企業や店舗は、高い賃料を払う代わりに高いサービスを要求する傾向があるからです。そのため、警備や清掃と言ったサービスを提供しなければならなくなるかもしれません。
② 競争にさらされやすい
ビルに入居している企業や店舗は、激しい競争にさらされています。そのため、企業や店舗は少しでも条件が良いビルに入居しようとするでしょう。
土地オーナー様が建てたビルと似たコンセプトのビルが近隣にできた場合、テナントの企業や店舗は、土地オーナー様に賃料の減額を要求するかもしれません。もしくは、退去してしまう可能性もあります。
③ 経営リスクが高い
ビル経営は高度な不動産ビジネスなので、ビル経営のノウハウがない土地オーナー様の場合、経営リスクが高くなってしまいます。土地オーナー様のライバルは、ビル経営を専門に行なっている不動産会社になるからです。
ただし、このデメリットについては、土地オーナー様が土地活用専門会社に管理を委託すればクリアできるでしょう。
④ 景気に左右されやすい
ビルにテナントとして入居している企業や店舗のビジネスは、景気に左右されます。そのため景気が悪くなった場合には、企業が事業を縮小したり飲食店の売上が落ちたりするかもしれません。場合によってはビルから退去してしまう可能性もあるでしょう。
その点、賃貸マンション経営・アパート経営は、不景気でも人々が住居を必要とするため、景気に左右されにくい事業と言えます。
⑤ 固定資産税が高くなる
ビル経営のメリットとして節税効果を紹介しましたが、固定資産税の節税効果についてはビル経営より賃貸マンション・アパートのほうが有利です。都市計画税も、賃貸マンション・アパートのほうがより多く減額されます。
ビルの種類

土地オーナー様が建てるビルには、次のような種類があります。
オフィスビル
オフィスビルは、企業の事務所が入居するビルです。規模が大きな企業と契約できれば、複数のフロアをまとめて借りてもらうことができるでしょう。
飲食店ビル
飲食店ビルは、飲食店が入居するビルです。飲食の種類は問わず、居酒屋、レストラン、カフェなどが考えられます。
商業ビル
商業ビルは、企業の事務所や飲食店が入居するビルです。例えば1~2階は飲食店やセレクトショップに貸し、3~5階は企業に事務所として貸す、と言った複合型にすることもできます。
メディカルビル
メディカルビルは、医療機関が入居するビルで、主に独立開業した医師たちが入居します。街に点在しているクリニックが1棟のビルに集約されるイメージです。
ビル(テナントビル)建設に向いている土地

ビル経営に向いている土地、向いていない土地について詳しくみていきましょう。
ビル経営に向いている土地
ビル経営に向いている土地は、次の通りです。
- ① 都市部
- ② 駅近く
- ③ 大通り沿い
- ① 都市部
- ② 駅近く
- ③ 大通り沿い
ひとつずつ詳しくみていきましょう。
① 都市部
ビル経営に最も向いている土地は、都市部の土地です。そのため、東京23区内、首都圏の県庁所在地、名古屋エリア、大阪エリアなどは、ビル経営に最適と言えるでしょう。
人が集まってビジネスが活発な場所はビルが不足しているため、早期の満室が期待できます。
② 駅近く
JR駅、地下鉄駅、私鉄駅などの駅近くの土地もビル経営に向いています。特に、駅の近くにビルがなかったり、ビルがあっても古いビルが多かったりする場合は、新たなビルが求められているので、土地オーナー様にとってはビル経営のチャンスと言えるでしょう。
③ 大通り沿い
大通り沿いの土地も、人通りが多ければビル経営に向いています。公共交通機関のアクセスなどにもよりますが、飲食店ビルなどは適しているでしょう。
ビル経営に向いていない土地
ビル経営に向いていない土地としては、次のようなケースが挙げられます。
- ① 過疎地
- ② 閑静な住宅街
- ③ 公共交通機関のアクセスが不便
- ① 過疎地
- ② 閑静な住宅街
- ③ 公共交通機関のアクセスが不便
① 過疎地
ビルはビジネス(事業)をする企業や人が使うため、過疎地の土地はビル経営に向いていないでしょう。
② 閑静な住宅街
住宅街には人が大勢いますが、ビルは求められていないでしょう。ビルが景観を壊す可能性があれば、ビル建設の反対運動が起きてしまうかもしれません。その場合、ビルが完成しても借り手を探すのに苦労するはずです。ただし、オシャレな飲食店を集める飲食店ビルであれば住宅街の住民から歓迎される可能性もあるため、住民のニーズをしっかりとリサーチすることが大切になるでしょう。
③ 公共交通機関のアクセスが不便
地方都市の場合、「都市部」と呼ばれるエリアでも公共交通機関のアクセスが不便な地区があります。そのような立地にある土地はビル経営に向いていないかもしれません。
それでも土地でビル経営を始めようとする場合には、事前に入念な市場調査を行なうべきでしょう。
ビル(テナントビル)建設の管理・運営について

土地オーナー様のなかには、ビル経営に関心を持ちながら「これまでビル経営の経験がないのに、自分にできるだろうか」と不安を持っている人もいるでしょう。そのような土地オーナー様には、次のような運営方法と経営方法をおすすめします。
- ① 一括借上げ(サブリース)方式
- ② 等価交換方式
- ③ 事業用定期借地方式
- ① 一括借上げ(サブリース)方式
- ② 等価交換方式
- ③ 事業用定期借地方式
ひとつずつ詳しくみていきましょう。
① 一括借上げ(サブリース)方式
一括借上げ方式は、土地オーナー様がビルを建設し、その後の運営と経営を土地活用専門会社に任せる方法です。この方法により、土地オーナー様は「空室リスク」や「管理の手間」から解放されます。ビルのテナントの募集や賃料の徴収、ビル管理、警備・清掃の手配と言った業務も土地活用専門会社が行ないます。
土地活用専門会社は、土地オーナー様へ毎月決められた賃料を支払うと共に、テナントから賃料を徴収します。テナントから徴収した賃料と土地オーナー様へ支払う賃料との差分が、土地活用専門会社の収益となります。
② 等価交換方式
等価交換方式とは、土地オーナー様が土地を提供し、土地活用専門会社がビルの建築費を提供する方法です。完成したビルの土地と建物の所有権は「出資比率」によって分けます。
土地オーナー様は自己資金を使うことなくビル経営に乗り出すことが可能ですが、土地の一部を土地活用専門会社に譲り渡すことになると言う仕組みです。その代わり土地オーナー様はビル(建物)の所有権の一部を得ることになります。
③ 事業用定期借地権方式
土地オーナー様がビル経営に一切タッチすることなくビル経営に参画することも可能です。
それは、土地オーナー様が土地だけを土地活用専門会社に貸すと言う方法です。土地オーナー様は、土地を土地活用専門会社に貸し、そこに土地活用専門会社がビルを建ててビル経営をします。そして、土地活用専門会社は土地オーナー様に地代を支払うと言う仕組みです。
このとき土地オーナー様は「事業用定期借地権」を使って土地を貸したほうが良いでしょう。事業用定期借地権で土地を貸せば、10年以上50年未満の間で土地の返還を受けることができるからです。一般定期借地権で貸してしまうと、50年以上土地の返還を受けられなくなるので注意しましょう。
ビル(テナントビル)以外にも検討したい土地活用法

土地オーナー様がこの記事をご覧頂き、ビル経営に興味を持たれた場合でも、念のためその他の土地活用法についても確認しておいたほうが良いでしょう。
例えば、賃貸マンション経営・アパート経営と比較してみましょう。
<賃貸マンション経営・アパート経営のメリット>
- 賃貸マンション・アパートの建設コストは、ビルの建設コストより安い
- ビル経営は景気に左右されやすいが、賃貸マンション経営・アパート経営は、不景気でも人々は住居を必要とするので、景気の影響を受けにくい
- 固定資産税の節税効果については、ビル経営より賃貸マンション・アパートのほうが有利
- ビルのテナントに入っている企業や店舗は、高い賃料を払う代わりに、高いサービスを要求する
<賃貸マンション経営・アパート経営のメリット>
- 賃貸マンション・アパートの建設コストは、ビルの建設コストより安い
- ビル経営は景気に左右されやすいが、賃貸マンション経営・アパート経営は、不景気でも人々は住居を必要とするので、景気の影響を受けにくい
- 固定資産税の節税効果については、ビル経営より賃貸マンション・アパートのほうが有利
- ビルのテナントに入っている企業や店舗は、高い賃料を払う代わりに、高いサービスを要求する
<ビル経営のメリット(先ほど紹介したものを再掲)>
- 賃料を高く設定できる
- 収益性が高い
- 節税効果を期待できる
- 転用しやすい
<ビル経営のメリット(先ほど紹介したものを再掲)>
- 賃料を高く設定できる
- 収益性が高い
- 節税効果を期待できる
- 転用しやすい
メリットには「強弱」があり、ある人にはメリットが小さくても、別の人には大きなメリットに感じられることがあります。そのため、これらのメリットも、土地オーナー様によって「強弱」があるはずです。
以上のように、賃貸マンション経営・アパート経営のメリットと、ビル経営のメリットを並べると、土地オーナー様は、どのメリットを優先すべきか分かりやすくなります。
これらの「ビル経営と賃貸マンション経営・アパート経営」の比較だけでなく、「ビル経営と駐車場経営」「ビル経営とトランクルーム経営」などについても比較・検討していくことで、それぞれのメリット・デメリットを明確にすることができます。
まとめ
有効に土地活用したいなら、プロに相談しませんか

今回は、ビルを建設して土地活用するメリット・デメリットなどをご紹介しました。ビル経営に関心をお持ちの土地オーナー様は、ぜひこの機会に土地活用専門会社に相談してみてはいかがでしょうか。
土地活用専門会社は、「ビル経営と賃貸マンション経営・アパート経営の比較」や「ビル経営と駐車場経営の比較」「ビル経営とトランクルーム経営の比較」を得意としています。そのため、土地オーナー様に最適な土地活用法の選択肢をご提供することも可能です。
土地活用のパイオニアである東建コーポレーションでは、蓄積されたノウハウをもとに、土地オーナー様の土地活用を全面的にサポートさせて頂いております。土地活用としてのビル経営のノウハウも蓄積しておりますので、土地活用についてお悩みの際はぜひお気軽に土地活用の東建コーポレーションにご相談下さい。
※この記事は、2019年12月時点の情報に基づいて作成されています。
- 逆瀬川 勇造
さかせがわ ゆうぞう - 地方銀行にてリテール業務に従事後、不動産部門のある注文住宅会社にて新築住宅、不動産売買業務に携わる。 金融知識を活かした住宅ローン提案、綿密なヒアリングからのライフプランニング、税金や相続のアドバイスから税理士への橋渡しなど、新築住宅、不動産売買にまつわる金銭問題の解決を得意とする。