【vol.31】賃貸住宅トレンド「一人暮らしの部屋に今、求められていることは?」
2018年6月20日

全国宅地建物取引業協会連合会(以下、全宅連)と、全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)は、2018年1月26~29日の間、「一人暮らしに関する意識調査(平成29年度)」を全国の18歳以上の男女2800名を対象にインターネットを通じて実施しました。
アンケートには「現在一人暮らしをしている人・一人暮らしをしたい/予定がある人」が回答。
3月19日に発表された結果から、一人暮らしの部屋に求められていることを探っていきます。
重視ポイントの1位は間取りの広さ
まず、前提条件となる「住まいの状況」については、「18~29歳 現在一人暮らし」層は、「ワンルーム」「1K」といった部屋数の少ない住居に住んでいる人が多く、平均家賃も相対的に低くなっています。
家賃については、半数を超える54.4%が、4~6万円台と回答しています。

次に、「部屋探しの重視ポイント」という質問項目の中で、「建物」についてのこだわりを尋ねたところ、2018年は「セキュリティー」に対する意識が高まっており、「耐震性」については、横這いに近いものの微増しています。
その一方、大きく低下したのは「駐車場の有無」で、対前年で18.7ポイントの減少をみせ、若者の「車離れ」を象徴する結果となりました。
前年と比較して減少しているものの、重視ポイントの上位項目は、1位から順に間取りの広さ、日当たり、築年数(築年数のみ上昇傾向)となっており、特に「今後一人暮らし意向あり」層については、「現在一人暮らし」層より耐震性とセキュリティーを重視していることがわかりました。

「一人暮らしに関する意識調査」調査結果の概略 参照 (複数回答)
実質的な暮らしやすさを求める傾向に
また、「環境についての重視ポイント」については、2018年は「駅が近い」をより重視するようになり、対前年で13.6ポイントの伸びを見せています。
その他の回答からわかることといえば、物件探しにおける「環境」のキーワードは、買い物の利便性と距離の利便性(駅、学校・職場)のようで、特に18~29歳の若い年齢層は「学校・職場に近い」ということを重視し、30代以降、年齢を重ねるにつれて「静けさ」や「公園などの自然環境」を重視するようになることもわかりました。
また、意外にも巷で話題の住みたい町など「地域ブランド」を重視する人は少なく、ブランドよりも実質的な暮らしやすさを重視していることがわかりました。こういった実用性を求める回答は「今後一人暮らし意向あり」層が「医療機関の有無」を重視していること等にも表れています。

「一人暮らしに関する意識調査」調査結果の概略 参照 (複数回答)

また、「部屋の設備」については、バスとトイレが別、エアコン付、収納スペースが上位と、過去と相違ない結果になりました。また、設備面でも「セキュリティー」意識によるニーズからか、オートロックや防犯カメラを重視する声が年々増えている内容となりました。

「一人暮らしに関する意識調査」調査結果の概略 参照 (複数回答)
仕送り額と平均家賃の関係性
ここまでの結果から、一人暮らしの部屋に求められていることは何をおいても利便性・安全性だといえるでしょう。
忙しい若者達は、駅や店舗、学校へのアクセスが良く、フットワーク軽く活動でき、仮に広さはなかったとしても、安心して暮らせる清潔な部屋を求めているといえます。
最後に、関連する情報として賃料についての傾向も見逃せません。
先日、首都圏を中心とする私立大に2017年度に入学した下宿生への仕送り額(6月以降の月平均)が17年ぶりに増加し、86,100円になったと、東京地区私立大学教職員組合連合の家計負担調査から発表されました。
それでも、仕送り額のピークだった1994年に比べれば、現在の仕送り額は3割ほど低いままです。仕送り額の平均86,100円から、家賃の平均61,600円を引けば残りの生活費は、ひと月あたり24,500円。
一日にすれば817円で生活することになります。最近の学生達は授業の後、終電近くまで毎日のようにアルバイトをしていると聞きます。
そんな多忙な若者を支えるのが「一人暮らしの部屋」。
若者の負担を考慮した住宅の在り方が問われています。