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【vol.53】今昔入居者ニーズを「〇〇付き賃貸アパート」の変遷から考察!

2018年11月28日

今も昔も「〇〇付き賃貸アパート/マンション」という言葉をよく目にします。近年で最もポピュラーなものは「家具・家電付き」賃貸住宅かもしれませんが、実は過去から現在まで、実に面白い「〇〇付き賃貸」が存在しているのをご存じでしょうか。

今昔入居者ニーズを「○○付き賃貸アパート」の変遷から考察!

ドラマに影響を受けて台頭したバブル期ならではの物件

バブル期には、景気の良さや当時の文化の影響から、派手な設備付きの物件が多く登場しました。

代表例をあげると、「スポーツクラブ」や「ガーデンプール」「ラウンジ」「ゴルフ練習場」等、様々な設備が企画運営されていました。こういった設備の他にも、「売り文句」として活発だったのが「デザイナーズ物件」です。

先駆けとして有名なのは、1988年にW浅野の主演で大ヒットした、フジテレビドラマ「抱きしめたい」の舞台として利用された「アトリウム」というものです。パステルカラーの外観に、広い中庭が印象的な建物でした。

しかし、当時の物件は、どれも目新しさやデザイン性が重視され、実用的だったとはいえないようです。明るく、開放的な広い庭が存在しても、そこに「コミュニティーを作る」という発想はなく、現在のような入居者が利用できる共有スペースを設けた「〇〇付き物件」との違いは明らかです。

また、駐輪場のない物件も、この時代の特徴としてよく見られます。駅から数分以上の距離があるにもかかわらず、駐輪場がなければ、入居者は敷地内のいたるところに駐輪することになり、せっかくのセンスある景観も台無しになります。

入居者の8,9割が男性

同様に、バルコニーに洗濯用のバーが設置されていない物件も多いため、住民はバルコニーの手すり等に洗濯物を干す結果となってしまいます。さらに、収納に関しても軽視されていたのが特徴で、それに加えて賃料の高さもあってか、バブル期のデザイナーズ物件の入居者の8、9割は男性という時代が長く続いたようです。

時代に合わせて進化する〇〇付き物件

最近の「〇〇付き物件」にはどのような例があるのでしょうか。まず、前提として30年前の「バブル期」と、「現在」では入居者の事情が異なります。

近年では女性の活躍は著しく、経済的に自立した「一人暮らし女性」は多く存在します。そういった女性にとって必要なのは、「収納」や「バストイレ別」「オートロック」等、実用面を考えた設備です。

もちろん、男性にとってもこういった設備は重要視されているため、これらはむしろ標準装備といえます。付いているからといって「〇〇付き」とはいえないでしょう。

では、どういった「標準規格外の事例」があるか探してみると、「保育園付き」「クリニック付き」「コンビニ付き」のような事例から、「トレーラー付き」「銭湯付き」等まで、様々なものが見つかります。

こういったサービスの特徴を観察すると、「非日常の生活など、何か新しい体験や付加価値を提供してくれるもの」「生活に必要なサービスを住居によって解決するもの」「人やコミュニティーとの繋がりを提供するもの」等に分かれるようです。

「保育園付き」「クリニック付き」「コンビニ付き」はいうまでもなく、入居者の暮らしに直結したサービスであり、そのニーズも解りやすいかもしれません。では、「トレーラー付き」「銭湯付き」は、なぜ人気があるのでしょうか?

トレーラー付きアパートを企画した「住まいLOVEグループ」の水野氏によると、この企画のきっかけは、「中古で購入したトレーラーを自社所有アパートの敷地内に置いてみた」ことで、数日後には入居が決まったといいます。

入居したのは、自宅でネイルサロンを経営していた女性で、「サロンと住居(=オンとオフ)を分けたい」というニーズがあったそうです。

自然の中での非日常体験

この他にも、森林や自然の中でトレーラーハウスを賃貸しているという事例が散見されます。こちらに関しては、「自然の中での暮らし(非日常)」を体験することに価値を感じて入居者が集まるということでしょう。

「銭湯付き」の事例は、シャワーだけ浴びるというスタイルが基本になる中で、「銭湯に入る」という「非日常」を提供している例です。

中でも面白い事例では、東京都の高円寺で、銭湯に隣接する風呂なしアパートの入居者が「銭湯暮らし」という名のプロジェクトを、町づくりの一環として1年限定で立ち上げたところ、銭湯の客が増え、アパート内の民泊で収益が上がり、銭湯でのイベントを開催すると、来場者は150人を超え、数十万の売上を一日であげてしまったのだといいます。

ニーズに合わせて変化

過去にあった、「ゴルフ練習場付き物件」を現代でアレンジするとどうなるのでしょうか?

実は、都内某所には数年前から「ゴルフ好きを集めたシェアハウス」なるものが存在しています。この建物の中には「ゴルフの練習」ができるスペースがあり、ゴルフを入口にして、入居者同士が交流できるといいます。

まさに、近年急増している「シェアハウス」は、設備(ハード)だけでなく、「サービスやコミュニティーにこそ付加価値がある」ということを体現しています。

30年間の「変化」は、不動産業界が入居者や社会のニーズを少しずつ理解しながら、「学習・変化」をしてきた証かもしれません。

サービスやコミュニティーにこそ付加価値がある

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