【vol.57】「長男のUターン」は地方では66.5%が諦めているって本当?
2018年12月13日

一昔前であれば、長男は、「家を継ぐ」「親の面倒を見る」という風習がありました。現代にも、その風習は残されているのでしょうか。
不動産情報サービスのアットホーム株式会社(本社:東京都大田区)が、東京で働く長男を持つ40歳以上の親618名を対象に、「長男に地元に戻ってきて欲しいか」「将来長男と同居をしたいか」などを聞く、「長男にUターンして欲しいか」に関する調査を行ないました。主な回答結果は、次の通りです。
「長男にUターンして欲しいですか?」調査の解答結果
<東京で働く長男を持つ40歳以上の親(618名)を対象>
- ・長男が地元に戻ってくることを諦めている
- 66.5%
- ・長男に地元に戻ってきて欲しい
- 45.6%
- ・地元に住んでくれるなら、長男でなくても良い
- 92.6%
- ・長男と将来同居したい
- 17.3%
- ・長男と将来近居したい
- 43.8%
同調査の内容を詳しく見ていくことにしましょう。
「家に戻ってきて欲しい」と親から伝えることは難しい
まず、なぜ66.5%もの親が長男のUターンを諦めているのか、その背景を考えてみます。
同調査項目は、「長男には、ずっと地元に戻らないと言われていますか?」という質問から始まっています。この質問に対して、「ずっと地元に戻らない」と言われた親が全体の53.9%で半数以上いることがわかりました。
加えて、長男の婚姻状況、居住形態別で見てみると、長男が既婚者だと60%以上が「戻らない」と回答し、未婚者よりも約20%も高くなっています。
また、長男が持ち家の場合は70%近くが「戻らない」と回答しています。
賃貸暮らしよりも約20%高くなっています。さらに長男の年代別で見ると、年代が上がるにつれて、「戻らない」と言われる割合が多くなるようです。
【長男の婚姻状況別の回答割合】
人数 | はい | いいえ | ||
---|---|---|---|---|
長男の 婚姻状況 |
||||
未婚 | 318名 | 44.7% | 55.3% | |
既婚 | 300名 | 63.7% | 36.3% |
【長男の居住形態別の回答割合】
人数 | はい | いいえ | ||
---|---|---|---|---|
長男の 居住形態 |
||||
持ち家 | 165名 | 68.4% | 31.6% | |
賃貸住宅 | 449名 | 47.4% | 52.6% | |
その他 | 4名 | 75.0% | 25.0% |
【長男の年代別の回答割合】
人数 | はい | いいえ | ||
---|---|---|---|---|
長男の 年代 |
||||
20代 | 206名 | 44.7% | 55.3% | |
30代 | 206名 | 56.8% | 43.2% | |
40代 | 206名 | 60.2% | 39.8% |
では、親の本心はどうでしょうか。「本心としては、長男には地元に戻ってきて欲しいと思っていますか?」という質問に対して、45.6%の約半数が「はい」と回答しました。
長男に対して「将来地元に戻ってきて欲しい」ということを言ったかどうかについては、「はっきり言った」人は4.0%で、戻ってきて欲しいという旨を「遠回しに言った」人は10.7%、「どちらも言った」人は8.3%でした。
つまり、「はっきり言った」人、「遠回しに言った」人、「どちらも言った」人を総合しても、長男に「将来地元に戻ってきて欲しい」と伝えたことがある人は23.0%、全体の4分の1以下ということになります。「戻ってきて欲しい」と思ったとしても、それを長男に伝えることはほとんどないということなのでしょう。
この項目では「長男が地元に戻ってきてくれるなら、自腹で、自宅を二世帯住宅にしたいと思うか」を訊ねていますが、「はい」と答えた人は約20%でした。さらにこの「自腹で自宅を二世帯住宅にしたいと思う」人に、いくらまでなら建設費用を払っていいと思うか聞いたところ、平均額は1609.8万円だったようです。
「将来地元に戻って来て欲しい」と言ったかどうかの回答割合

「息子や娘に戻ってきて欲しい」という期待は
存在している
「後を継いでくれるなら、地元に来てくれるなら、長男でなくても構わない」そんな希望があるという可能性も考えて、同調査では別の質問が続きます。
長男以外にも息子や娘がいる人に対し、「息子や娘に今後(も)地元に住んで欲しいか」を聞いたところ、「地元に住んで欲しい」という人の割合は42.1%でした。
全体の4割以上の人が地元に住んで欲しいと望んでいるのです。
ここでさらに、この「地元に住んで欲しい」という人(42.1%に該当する231名)に対し、地元に住んでくれるなら長男でなくても良いかを聞いたところ、92.6%と実に9割以上が、「長男でなくても良い」と回答したということです。「(息子や娘に)地元に帰ってきて欲しい」という期待はしっかりと存在しているといえます。

では、「Uターンを諦める」ことになった主な原因は何なのでしょうか。同調査では「長男と同居したいか」という質問では、「はい」がわずか17.3%で「いいえ」という回答結果が大多数になっています。
一方、「長男と近居したいか」という問いは、43.8%が「はい」と答え、4割を超えています。
最後に、「同居も近居も考えない理由」についての質問では、「長男やその家族に気を遣うのが嫌だから」が1位、次いで、「今の地元を離れたくないから」「東京やその周辺エリアで生活をしたくないから」となり、選択肢にはない理由として、「長男の自由にさせてあげたい」「長男の仕事の都合もある」といった回答が挙がっており、長男を気遣う結果となりました。
昔のように長男にはこだわらず、また、同居ではなく近居、現代の親子関係は、程よい距離感が親にも子にも望まれているのかもしれせん。