【vol.67】賃貸住宅にもエコ化の波! 「省CO2促進モデル事業」と「ZEH」って何?
2019年1月30日

ZEH(ゼッチ)という言葉をご存知でしょうか。
ZEHとは「Net Zero Energy House ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の頭文字をとった略称で、エネルギー消費量が正味ゼロの住宅を指します。
ゼロエネルギー住宅やゼッチと呼ばれることもありますが、どちらもZEHと同じ意味で使われます。
ゼロエネルギー住宅といっても人が生活する以上、住宅で消費するエネルギーが完全にゼロになることはないため、ここでいうゼロは、「完全にゼロ」ということではなく、正味ゼロ、すなわち「プラスマイナスゼロ」という意味で使用されています。

つまり、ZEHとは、省エネを行なうことでエネルギー消費量をできるだけ少なくした上で、必要なエネルギー消費量と同じ量のエネルギーを太陽光発電システムやエネファームなどによって自ら生み出すことができる住宅のことを指します。
「ZEH」普及の背景に政府の政策
「省CO2促進モデル事業」
現在、ZEHが注目されている背景には、以下の国際的な決定と、それに対する日本政府の政策が関係しています。
2015年12月、第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で、パリ協定が採択されました。
気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定(合意)が締結され、先進国である日本にも「エネルギーを生産、消費する際に発生するCO2(二酸化炭素)の削減目標」が課されることになりました。
この目標を達成するには、家庭部門からのエネルギー消費を4割削減する必要があると試算され、賃貸住宅に注目が集まりました。
国土交通省と環境省は、省CO2促進モデル事業を立ち上げることで、戸建住宅だけでなく、新設着工件数の約4割を占める賃貸住宅の省エネルギー性能の向上も図ろうとしているのです。
「賃貸住宅における省CO2促進モデル事業」の概要
国土交通省が発表した賃貸住宅における省CO2促進モデル事業によると、「賃貸住宅について、一定の断熱性能を満たし、かつ住宅の省エネ基準よりも①20%以上(再エネ自家消費算入可)、もしくは②10%以上(再エネ自家消費算入不可)CO2排出量が少ない賃貸住宅を新築、又は同基準を達成するように既築住宅を改修する場合に、追加的に必要となる給湯、空調、照明設備等の高効率化のために要する費用の一部を補助する。」と記載されています。
補助率は、① 20%以上が、1/2(上限額:60万円/戸)、② 10%以上が、
1/3(上限額:30万円/戸)となっており、建設コストの負担を下げるよう意図されています。
また、こうした住宅性能の表示を含むPRだけでなく、仲介会社と連携し、Webサイト等による賃貸住宅の検索時に「低炭素型」での検索をできるようにすることで、市場全体のエコ賃貸化も目指しています。
賃貸住宅における省CO2促進モデル事業 イメージ

省エネ設備の今後
経済産業省資源エネルギー庁ではZEH支援事業を開始することで、「ZEHの自立的普及を目指して高断熱外皮、高性能設備、制御機構、蓄電システム等を組み合わせ、ZEHを新築する、ZEHの新築建売住宅を購入する、または既存戸建住宅をZEHへ改修する者に補助金を交付する」としています。
これにより、交付要件を満たす住宅であれば一戸あたり定額の補助が得られ、蓄電システムに対しても補助金額の要件が定義されています。
また、賃貸住宅についても、ZEH支援事業の補助制度が検討されており、交付要件を満たす賃貸住宅であれば一戸あたり定額の補助や、蓄電システムに対する補助金が受けられるようになっていくと考えられます。
しかし、賃貸住宅における省CO2促進モデル事業による補助金が得られたり、ZEH支援事業の補助制度が検討されているとはいえ、やはり従来の設備よりコストがかかるZEH住宅。
それでも賃貸物件としての優位性を保つ上で、ZEH住宅には価値があるという見解も多いようです。
具体的には「高い断熱性能で、冬は暖かく快適であり、電気代等を考えれば住む人にとって経済的」といった点が挙げられています。
今後も賃貸業界がエコ化していくのは必然の流れといえるのかもしれません。