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【vol.70】「2020年・省エネ基準適合住宅の義務化」がもたらす影響

2019年2月20日

新「建築物省エネ法(通称)」(正式名称:建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)が、2017年4月に施行され、話題となりました。

法律の背景には、社会経済情勢の変化に伴って国内のエネルギー需要が逼迫している中で、建築物におけるエネルギーの消費量が著しく増加し続けているという問題があります。

新「建築物省エネ法」は、建築物のエネルギー消費性能の向上を図ることを目的として制定されました。

この法律により、2020年以降はすべての新築住宅に対し「省エネ基準」への適合が義務化される見込みです。

省エネ基準適合住宅の義務化

改正された省エネ基準って?

「建築物省エネ法」による「省エネ基準」は、次の2点があります。

  • ・住宅の窓や外壁などの「外皮」性能を評価する基準
  • ・設備機器等の「一次エネルギー」消費量を評価する基準

この基準は、2013年に定められたものです。

実は、それまでの省エネ基準では、外壁や壁、屋根など住宅の外皮の断熱性能のみを評価していたため、空調設備や照明設備等の設備性能を含んだ建物全体の評価ができませんでした。

また、設備性能を評価しようにも、建物で多く使われる電気・灯油・都市ガス等のエネルギーにはそれぞれ異なる計量単位(kWh、ℓ、MJ)が使用されているため、省エネ性能を客観的に比較しにくいという問題もありました。

そこで、国際的な基準に合わせ、新しい「省エネ基準」では、住宅の外皮の断熱性能に加えて設備性能を含めたトータルの省エネ性能で評価することになりました。

その際に、電気やガスといったエネルギーの消費量を、化石燃料や、水力・太陽光のような「一次エネルギー」での消費量へ変換したものが指標として用いられます。

省エネ基準適合住宅

「省エネ基準適合住宅」に求められるのは、2013年に改正された新たな基準です。

冷暖房機器をはじめ、給湯器、換気、照明器具などの設備を含む住宅の省エネ性能を、すべて一次エネルギー消費量に置き換えて評価することになります。

もし、太陽光発電設備や自然冷媒ヒートポンプ給湯機(関西電力のエコキュートなど)による省エネ効果等があれば、それも反映されます。

日本の住宅の欠点

ところで、日本と世界の住宅性能を比べたときに、日本の住宅に顕著な「欠点」があるのをご存知でしょうか。

日本の住宅と海外の住宅で最も異なる点は、建物の断熱性能です。

とりわけ窓周りの断熱性については、諸外国と比較した場合に、日本の住宅は圧倒的に劣っているのです。

例えば、日本では窓サッシにアルミサッシを使用するのが一般的です。
アルミは加工しやすく耐久性等の性能に優れていますが、残念ながら断熱性能がとても低いのです。

古いアパートやマンション、一戸建てに住んだことのある方は、真冬の帰宅時に外と同じような寒さを味わった方も多いかと思います。

断熱性が低い日本の住宅は、冬には室内の熱を外に漏らし、夏には外の熱気が室内へ強力に攻めてくるような構造になっており、省エネ向きであるとは決して言えないのです。

断熱性の低い日本の住宅

省エネ先進国といわれるドイツでは、アルミ製のものは1割程度で、ほとんどが樹脂製や木製のサッシなのだそうです。米国や英国もドイツと同様で、サッシにはアルミよりも断熱性の高い素材を使っています。これは欧米諸国だけのことではなく、例えばアジア圏でも、中国ではフランスよりも高い断熱性の基準が設けられており、韓国の住宅も断熱性能は高いです。

今回の「省エネ基準」改正により、建物の断熱性能に目が向けられることで、今後日本の室内環境も改善されていくかもしれません。

義務化がもたらす影響と今後の対策は?

「省エネ基準適合住宅」の義務化によって、燃費性能が新たに住宅の価値を判断する基準項目になるということが指摘されています。

これは、1981年以前に建てられた住宅が「旧耐震建物」として問題視されている事態とも似ています。「省エネ基準」の義務化によって、省エネ性能も旧性能、新性能として表現されるようになるかもしれません。そうなれば省エネ基準で建築していない住宅の価値は下がってしまいます。

既にマンションの販売現場では、冷暖房費が一目でわかるリストを住戸ごとに見せて、各居室の燃費性能を説明している例も出てきているそうです。

従来、マンションで人気の部屋は、角部屋や最上階の部屋でしたが、燃費性能を考えると、「天井や壁が直接外気に接触する」部屋は燃費性能が悪くなりやすく、人気が下がるかもしれません。

「今後は、車と同様に住宅も燃費性能が購入時の判断基準となる時代になる」と専門家は口を揃えて言います。

住宅の価値に新しい基準が増えることで、住宅の所有者様やアパート・マンションのオーナー様にとって様々な影響が出ると予想されます。これから住宅を建てたり、購入したりする際には、改正省エネ基準について意識して確認する必要があると言えます。

燃費性能の良い住宅

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