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columnNo.4民事信託での財産処分

前回は、委託者が受託者に財産を預け、受託者がその預かった財産をどのように資産運用していくかを、金銭を信託した場合と、アパートや賃貸マンションなどの収益不動産を信託した場合を例に取りお話させて頂きましたが、今回は、受託者が行なう信託財産の処分についてお話させて頂きます。

財産処分

処分」というと、信託財産を売却することをイメージされる方が多いと思いますが、信託でいう処分とは売却のみではありません。

信託における信託財産の処分とは、前回お話させて頂いた「信託不動産の運用」と密接に関係しています。

今回も分かりやすく不動産の信託を例にとってお話させて頂きます。

例えば、委託者が自分を受益者として、受託者に収益不動産を信託したとします。

受託者は、信託された収益不動産を信託契約等の内容にしたがって、賃料等により得られた利益を受益者へ給付しますが、思ったように収益を上げることができない場合、受託者はどのような方法で収益を改善することができるでしょうか?

信託財産の処分1(信託不動産の売却)

ひとつの方法としては、現在の信託財産である低収益の信託不動産を売却し、売却して得た金銭(信託財産)をもって、より高収益の収益不動産を購入し、収益を改善させるといったものがあります

これは、当初信託された収益不動産を「処分」し、新たな収益不動産を購入することにより、信託契約の内容を実現しようとするものです。

この場合の信託財産は、「当初信託不動産」→「信託不動産を売却(処分)して得られた金銭」→「信託財産である金銭をもってして購入した不動産(これも金銭という信託財産の「処分」にあたります。)」と変化したことになります。
つまり、信託財産を2回処分し、当初信託財産をより高収益な信託財産へ変化させたことになります。

写真4

信託財産の処分2(信託不動産への担保設定)

もうひとつの方法としては、現在の信託財産である低収益である老朽貸家などの信託不動産を担保として、受託者が金融機関から融資を受けるというものがあります。

これにより、信託財産は信託不動産と新たに借り入れた金銭となり、金融機関へ受託者が負う債務は、信託の債務となります。

この金銭を利用し、低収益の収益不動産に大規模修繕やリノベーションを行ない、収益を改善させることが可能となります。
また、低収益不動産をそのままとして、借り入れた金銭で新たに高収益の不動産を購入することも可能です(この場合は、新たに購入する高収益の収益不動産も担保とする必要があると思われます)。

このように、受託者の判断で信託財産を処分し、資産運用をしていくことにより、信託契約等の内容をより充実したものにしていくことが可能となります。

最終的には受益者のため

ここまで、3回にわたって民事信託の内容として、民事信託における財産の管理・運用・処分についてお話させて頂きましたが、これらはすべて最終的には、信託契約等の内容に定められた信託の主旨である「受益者への給付」をきちんと行なうために受託者がすべきこととなります。

信託財産の運用について、金銭を信託した場合と、アパートや賃貸マンションなどの不動産を信託した場合を例にとって簡単にお話させて頂きましたが、信託における財産運用について、どのように行なうかイメージをお持ち頂けましたでしょうか?

受託者の信託における行為は、すべて受益者のために行なうものであり、受託者の受益者を思う気持ちこそ「家族信託」にとってもっとも大切なことということがお分かり頂ければ、執筆者の望外の喜びです

次回は、「民事信託で賢く贈与」のお話をしたいと思います。

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