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columnNo.5民事信託で賢く贈与

前回までに、民事信託の基本的な資産運用についてお話ししてきましたが、今回は少し応用編として、民事信託を使った贈与についてご紹介します。

贈与はしてあげたいけれど・・・

お子さまやお孫さまへの将来のために、自分の財産を贈与してあげたい、そんな想いをお持ちの方もいらっしゃると思います。

しかし一方で、財産をもらう方が若年である場合、あげた途端に無駄遣いしてしまわないか・・・という心配もあろうかと思います。
また、もらう方が障害等により判断能力が不十分な場合、管理が難しく、あげたくてもあげられないということもあります。
また、たとえ充分な判断能力があったとしても、株式による資産運用や、アパート、賃貸マンション経営を有利に行なうには、自分が培った知識が必要だと考える人も多いでしょう。

このように、贈与はしてあげたいけれどその管理はさせたくない、または任せられないので、管理だけは自分が代わりにしたい、何か良い方法はないだろうか?そんなときに使えるのが民事信託です。

贈与

使うのは「自己信託」

今回使うのは、「自己信託」です。第1回でも少しお話しましたが、自己信託とは、「委託者自らが受託者となる信託」です。委託者が有している一定の財産を一定の信託目的にしたがって管理、処分、その他の目的達成のための行為を”自ら”する意思表示(「信託宣言」といいます。)を公正証書等一定の方式により行なうことによって設定することができます。

金銭を贈与したい場合を例に取って考えてみましょう。
例えば、あなたが誰かにお金をあげたい場合、あげたい相手(子や孫)を受益者、あげたいお金を信託財産として自己信託を設定します。これであなた自身を受託者とする民事信託ができあがります。

信託を設定することによって信託財産の実質的な所有者は、受益者になりますから、信託したお金は、受益者であるお子さまやお孫さまにあげたことになります。

しかし、信託財産を管理・処分する権利は、受託者つまりあなたにありますから、受益者であるお子さまやお孫さまは、もらったお金を自分で使うことはできません。
受益者が大人になって自分で管理できるようになるまでは、あなたが管理してあげることができます。
また、自分で管理できるようになるまでに、学業や病気・怪我の治療などで必要になった場合には、あなたの判断で必要な額を渡してあげることができます。

信託宣言図解

贈与税に注意!

上記のような信託を設定した場合、税法上は、委託者から受益者に対して贈与をしたものとみなされ、贈与税の対象になります。あくまでしたのは信託であり贈与をしたわけではありませんが、委託者の財産が実質的には受益者に移転しているという点では、贈与と同じだからです。

信託した財産の額に応じて贈与税がかかることになりますので、一度に多額のお金を信託してしまうと、受益者に高額な贈与税が発生することとなってしまいます。

追加信託をしよう

子や孫を受益者として一度にドカンと信託すると、贈与税の税率が高くなり、高額な贈与税を支払わなければならなくなってしまいます。
ではどうしたら良いでしょうか?

少しずつ信託すれば良いですね。最初に小額のお金を信託財産として信託を設定し、その信託に、毎年少しずつお金を追加で信託していくのです。一般的に追加信託と呼ばれています。暦年贈与と同じ考え方です。
何年かに分けて少しずつ信託していけば、贈与税を抑えることができます。

その際、追加信託をするごとに毎回信託を設定する必要はありません。最初の信託設定時に、信託財産の追加をすることができる旨を定めておけば、簡単に追加することができます。

信託を使った贈与のポイントは、①自己信託、②追加信託、そして③贈与税に注意です。実際に信託を設定される場合には、必ず税理士に相談の上、実行するようにしましょう。

次回は、「民事信託でしかできないこと「① 自益信託」」をご紹介したいと思います。

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