• 文字サイズ

columnNo.7民事信託でしかできないこと
②「後継ぎ遺贈」

前回は、委託者自らが受益者となる「自益信託」のお話と、信託の受託者が「金融機関からの融資」を受ける際の注意点についてお話をさせていただきましたが、今回は、「遺言ではできないこと」が「信託ではできる可能性がある」ことについてお話させて頂きたいと思います。

後継ぎ遺贈とは?

今回は、後継ぎ遺贈型の信託についてお話したいと思います。

もし自分が亡くなったら・・・「自分の財産は、残される妻が老後の生活に困らないよう、妻に全部残してあげたい。そこからさらに妻が亡くなった場合は、一家の後継ぎである長男に全財産を引継がせたい。」または、「一旦は、障害を持つ二男の生活のために二男に残し、二男が亡くなった後には、長男に引継がせたい」そんな要望をお持ちの方もいらっしゃると思います。

このように、自分が亡くなったら財産をAに、Aが亡くなったらBに、というように、次の次、さらには次の次の次まで財産の行き先を決めること、これを「後継ぎ遺贈」と言います。

跡継ぎ遺贈

遺言じゃダメなの?

ここまで読まれて、それなら「自分が亡くなったら妻に、妻がなくなったら長男に相続させる」という内容の遺言を作成すればよいのでは?と考えられた方もいらっしゃると思います。

しかし、実は上記のような内容の遺言は、「妻が亡くなったら長男に相続させる」という部分については、効力がありません。遺言で指定できるのは、あくまで”自分の財産”の行き先だけなのです。

上記のような遺言は、一見、自分の財産の行き先を指定しているように見えますが、違います。上記の遺言を書いたのがAさんだとします。Aさんが亡くなると、遺言にしたがって妻が財産を相続します。すると、妻が相続したAさんの財産は、この時点で妻の財産となり、もはやAさんの財産ではありません。

したがって、「妻が亡くなったら長男に相続させる」という部分は、妻の財産の行き先を指定しているため無効となります。妻が亡くなった後に長男に相続させたいのであれば、その旨の遺言を妻に書いてもらわなければなりません。

受益者連続型信託

このように、遺言で後継ぎ遺贈をしようとすると、自分の遺言だけでは目的を果たすことができません。さらに、途中の相続人が自分の思い通りの遺言が書いてくれるとは限りません。

そこで登場するのが「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」です。受益者連続信託とは、受益者の死亡等により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めがある信託です。

つまり、受益者Bが死亡したらCが受益権を取得する、受益者Cが死亡したらDが受益権を取得する、というように、受益権の行き先を、次の次、さらにその先まで決めることができます。

前述のAさんの例であれば、当初の受益者を妻、次の受益者を長男としておけば、自分の財産を受益権の形で妻→長男の順に引継がせることができます。

ただし、何代でも永遠に指定できるわけではありません。信託法で「・・・信託がされたときから三十年を経過したとき以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで~(中略)~の間」と有効期間が定められています。つまり、信託設定から30年経過後に受益権を取得した人が最後で、それ以降は引継ぐことができません。

≪後継ぎ遺贈型受益者連続信託≫

受益信託

遺留分に注意!

信託で財産を承継していく場合でも遺留分については検討しておく必要があります。

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人が最低限受取ることができる財産のことです。
仮に、相続人の内の誰か1人にすべての財産を相続させる旨の遺言があったとしても、他の相続人は、すべての財産を相続した相続人に対して、遺留分相当額を請求することができます。これを遺留分減殺請求と言います。

信託による財産承継が、遺留分減殺請求の対象になるかどうかは、様々な説があり、現在のところ明確な答えが無い状態ですが、残される相続人同士が揉める可能性がなるべく残らないようにしておきたいものです。

信託の場合でも受益権の承継の都度、遺留分減殺請求の対象になるという前提で、遺留分相当額を信託財産以外に確保しておく等の対策をしておくことが望ましいと思います。

次回は、『民事信託の落とし穴 ①信託の目的がダメな事例』について、ご紹介したいと思います。

ページの先頭へ