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columnNo.9民事信託の落とし穴
②「信託の受託者がダメな事例」

民事信託の落とし穴

前回は信託の心臓部である「信託の目的」のお話でした。
今回はその目的を達成する「受託者」について事例を挙げて掘り下げてみたいと思います。

Aさんからの相談です。

Aさんからの相談です。

私Aは、名古屋市内において築20年のアパートを経営しています。このたび、息子のBにこのアパートを信託して、管理を任せようと考えています。
息子に相談したところ、息子が社長をしている有限会社Xで受託したいということになりました。有限会社Xは電動工具の商社です。
法律上、何か問題はありませんか

≪回答≫
有限会社Xが信託の受託者となることは信託業法違反の可能性があります
参考:信託業法第91条等・・・3年以下の懲役または300万円以下の罰金等

信託業法違反

1.家族内の信託

家族内の信託というものは、受託者に信託の引受(受託)を不特定多数から反復継続して行なう意思(営業の意思)がないために、信託業法に抵触しないというのが基本的な考え方です。

では、受託者がどう考えているかというところですが、2回行なわないと業法違反と言えないのか、あるいは2回行なったらすべて業法違反となるのか、どちらも極端ではないかと考えます。今回は法人が受託者となるとのことで、一般的には法人には、「法人の目的・存在理由」があり、その存在理由から「営業の意思」が判断されるのではないかと考えます。

つまり、法人の目的に、信託の引受と記載してあれば、ストレートに業法に抵触するように受け取られかねません。しかし、他方で、法人の目的に信託のことが何も記載されていないと信託の引受という行為が法人において可能なのかも分かりません。

そのため、「○○家の保有する不動産に関する信託の引受」というように目的を限定して記載するようなケースがよく見受けられます。
これなら、目的により営業の意思もなく、かつ、法人の権限も明確になるというわけです。

2.設立経緯

さらに、法人の設立経緯も重要ではないかと考えます。

他の事業をバリバリと行なっている法人であれば、いわゆる営業の意思が認定されやすいと考えます。特に会社=営利法人であれば、営利の追求(株主への分配のために収益を獲得する活動)が最も大事な法人の使命ですので、それを実現するためにあらゆる行為をすることができます。
すでに行なっている事業に加えて、信託の引受という「事業」が入れば、それを使って営利の追求を行なうことが当然想定されます。というわけで、いっそう、営業の意思が認められやすくなるのではないかと危惧します。

やはり、家族による新設の法人で、できれば一般社団法人や一般財団法人等の非営利法人を受託者とすることが、上記のような営業の意思を認定されるリスクを回避するためにもっとも適切ではないかと考えます。

一般社団法人

3.法人が受託者となる場合の注意点

社団法人や財団法人を設立して、信託の受託者とすることがよいと考えますが、他方で資金繰りに少し問題が発生することが多いようです。

つまり、社団法人は出資不要ですし、財団法人の支出は基本財産を下回るような形ではできません。最低限の形(出資なし、財団にあっては基金300万円)で設立した場合、設立後に発生する各種の税金の支払いができなくなります。

安易に、個人が法人に対してお金を提供すると、その法人に対する寄付金として扱われ、法人税を支払わなければならなくなることがあります。信託の受託者を法人とすることは便利ですが、その法人の諸経費支払いのための資金繰りはどうするのがよいかをあらかじめ検討しておくことが重要です。

次回は、『民事信託の落とし穴 ③「信託受益権の作り方がダメな事例」』についてご紹介します。

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