columnNo.6贈与税の特例を活用して相続税対策!~配偶者贈与・教育資金贈与・住宅取得資金贈与~
贈与税には110万円の基礎控除以外にも、様々な特例を使って節税対策ができます。今回は、贈与税の特例として「配偶者贈与」「教育資金贈与」「住宅取得資金贈与」をご紹介します。

贈与税の配偶者控除
◆制度の概要
婚姻期間が20年以上である配偶者から、居住用不動産、または居住用不動産を取得するための金銭の贈与を受けた場合、贈与税の課税価格から110万円の基礎控除の他に最高2,000万円が控除されます。
なお、相続開始前3年以内贈与の加算の適用はありません。
◆要件
- (1)贈与の日において婚姻関係が20年以上であること。
- (2)居住用不動産、または居住用不動産を取得するための金銭贈与であること。
- (3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住用不動産を居住の用に供し(または贈与を受けた 金銭で居住用不動産を取得し、かつ居住の用に供し)、その後も引き続き居住の用に供する見 込みであること。
◆注意点
- (1)居住用不動産とは、国内にある専ら居住の用に供する土地、もしくは借地権、家屋に限ります。
- (2)贈与税の配偶者控除は、同一配偶者間においては、一生に一度しか適用できません。
- (3)相続時において小規模宅地等の特例を受ける場合を考慮する必要があります。

贈与税の配偶者控除の活用事例
~居住用不動産を売却予定である場合~
将来、居住用不動産を売却する予定がある場合には、贈与税の配偶者控除を有効活用し、現在の居住用不動産を配偶者と共有持分にすることにより、「居住用不動産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」の適用を2人分である6,000万円(3,000万円×2人)受けることができます。
なお、「居住用不動産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」は、家屋を所有している者が対象となるため、特に売却益が3,000万円を超えると予想される場合には、家屋を贈与しておかなければなりません。
ただし、売却する予定がない場合には、家屋は評価が下がり将来取り壊される可能性があることから、相続時のことを考慮して、土地を贈与しておくのがおすすめです。
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税について
◆制度の概要
2019年3月31日までの間に、直系尊属から30歳未満の子、孫などに信託等を利用して、教育資金を贈与した場合には、受贈者1人につき1,500万円まで贈与税が課税されません。
なお、相続開始前3年以内贈与の加算の適用はありません。
◆注意点
- (1)贈与を受けた金銭は、教育資金にしか使えません。(通学定期券代、留学渡航費を含む)
- (2)学校等以外に支払われる教育資金の場合、非課税枠は500万円が限度となります。
- (3)贈与を受けた金銭を引き出した場合には、領収書などを金融機関に提出しなければなりませ ん。ただし、支払金額が少額である場合には、領収書等の提出に代えて、支払金額や支払先 等を記載した明細書を提出することができます。

◆贈与税が課税される場合
- (1)受贈者が30歳に達したこと
- (2)信託財産等の価額がゼロになり、かつ教育資金管理契約を終了させる合意があったこと
- (3)上記①、または②の事由に該当した場合において、非課税拠出額(※1)から教育資金支出額(※2)を控除した残額がある
(3)の残額が贈与税の課税対象
- ※1:教育資金非課税申告書に当該規定の適用を受けるものとして記載した金額の合計額(1,500万円が限度)
- ※2:金融機関等の営業所等で教育資金として支払われた事実が領収書等により確認され、かつ記録された金額の合計額
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の
贈与税の非課税
◆制度の概要
2021年12月31日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用家屋の新築、取得、または増改築等に充てるための金銭を取得した場合において、一定の要件を満たすときは次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となる制度です。
なお、相続開始前3年以内贈与の加算の適用はありません。

【 非課税限度額の一覧表 】
消費税率 | 契約締結期間 | 良質な住宅 | 一般住宅 |
---|---|---|---|
住宅用家屋の対価の
消費税率が10%の場合 |
2019年4月~
2020年3月 |
3,000万円 | 2,500万円 |
2020年4月~
2021年3月 |
1,500万円 | 1,000万円 | |
2021年4月~
2021年12月 |
1,200万円 | 700万円 | |
上記1以外の場合
(消費税率8%) |
平成28年1月~
2020年3月 |
1,200万円 | 700万円 |
2020年4月~
2021年3月 |
1,000万円 | 500万円 | |
2021年4月~
2021年12月 |
800万円 | 300万円 |
◆贈与税が課税される場合
- (1)贈与を受けたときにおいて贈与者の直系卑属であること。
- (2)贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること。
- (3)贈与を受けた年の年分の所得税にかかる合計所得金額が2,000万円以下であること。
- (4)贈与を受けた年の翌年3月15日までに、住宅取得等資金の全額を充てて住宅用家屋の新築、取得、または増改築等をすること。
- (5)贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること、または同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。
◆贈与税が課税される場合
国内にある家屋であり、その家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下で、かつ床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。
◆申告要件
この制度は、その適用を受けようとする者の贈与税の期限内申告書に、その適用を受けようとする旨を記載し、計算の明細書等の書類を添付した場合に限り適用されます。贈与税の申告書を提出し忘れると、この制度が適用できなくなります。
◆ポイント
暦年課税、または相続とき精算課税の適用を受けている場合でも、各制度と併せて利用することができます。
