- 文字サイズ
- 小
- 中
- 大
columnNo.15アパート・賃貸マンション建築による 相続税対策と借入れのポイント
アパート・賃貸マンションを活用した相続税対策で「借金をすれば、相続税対策になる」という話はよく聞きますが、借金をせず自己資金で建築した場合は相続税対策にならないのでしょうか?
答えはNoです。
アパート・賃貸マンションを借入金で建てても、自己資金で建てても相続税対策になります。今回はそのあたりを検証していきたいと思います。

アパート・賃貸マンションを建築すると相続税対策になるのはなぜ?
「アパート・賃貸マンションを建築すると相続税対策に有効ですよ」とよく聞きますが、なぜ相続税対策になるのでしょうか?
アパート・賃貸マンション建築による相続税対策効果は簡潔に言うと、アパート・賃貸マンションを建築することにより、建物と土地の相続税評価が下がるため、相続税を節税することができるのです。
POINT-ポイント-
賃貸建物を建てると、建物と土地の評価が下がるため、相続税の節税ができる。
ケーススタディ
例として、月極駐車場として活用していた「相続税評価額3,000万円の土地」に、「7,000万円 の借入れをしてアパートを建築した場合」の相続税の節税額を見てみましょう。

この事例でみると、アパートを建築したことにより相続財産の評価額を4,510万円減少することができます。
借入れでアパート建築しないと相続税対策にならないの?
『利息の支払いをなるべく少なくしたいのですが、借入れでアパート・賃貸マンションを建築しないと相続税対策にならないのですか?』といった質問を受けることがあります。
本当のところはどうなのでしょうか?
確かに、相続税の計算はプラスの財産からマイナスの財産(借入れ)を控除して行なわれますので、借入金が残っていれば、正味財産は少なく計算されます。
しかし、その分プラスの財産である建物も新たに得ていますので、自己資金で建てても、借入金で建てても、現金を建物に交換している点は変わりません。いずれの場合も賃貸建物を建てることで、土地と建物の評価が下がり、相続税対策になるのです。
ケーススタディ
- 【仮定条件】:
- 所有財産は現金1億円+土地1億円=2億円
アパート建設費5,000万円
借入金で建設した場合
- 1)建築費: 5,000万円
現金保有:10,000万円 - 2)全額借入金にて建築
- 3)借地権割合50%・借家権割合30%の場合


- A:5,000万円×0.6(※1)×[1-0.3](※2)=2,100万円
- B:10,000万円×[1-0.5(※3)×0.3(※4)]=8,500万円
- 1)建築費:5,000万円
現金保有:10,000万円 - 2)全額借入金にて建築
- 3)借地権割合50%・借家権割合30%の場合
10,000万円(※a)+2,100万円(※b)+8,500万円(※c)ー5,000万円(※d)=15,600万円
相続税評価額:15,600万円
自己資金で建設した場合
- 1)建築費: 5,000万円
現金保有:10,000万円 - 2)全額自己資金にて建築
- 3)借地権割合50%・借家権割合30%の場合


- A:5,000万円×0.6(※1)×[1ー0.3](※2)=2,100万円
- B:10,000万円×[1-0.5(※3)×0.3(※4)]=8,500万円
- 1)建築費:5,000万円
現金保有:10,000万円 - 2)全額自己資金にて建築
- 3)借地権割合50%・借家権割合30%の場合
5,000万円(※a)+2,100万円(※b)+8,500万円(※c)=15,600万円
相続税評価額:15,600万円
※1:固定資産税評価額 / ※2:借家権控除 / ※3:借地権割合 / ※4:借家権割合
※a:現金保有分/ ※b:アパート / ※c:貸家建付地評価額 / ※d:借入金
但し、現金も借入金も相続財産です。そのため、相続人は借入金の返済義務も相続することになりますので、資産と負債のバランスを考える必要があります。
金融機関等の金利が低い昨今では、借入れを活用して現金を残す方法は有効ですが、借入期間が30年間と長期になりますので、間取りや設備など、しっかりと事業計画を検討し、相続後のことも視野に入れた、無理のない返済計画を検討しましょう。