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columnNo.20アパート経営の節税対策
~専従者給与のポイントとは?~
アパート・賃貸マンション経営を行なう際の節税対策として、「青色事業専従者給与を支払う」ことが挙げられます。
これは、簡潔に言うと一緒に住んでいる家族に給料を支払うとその金額が必要経費として認められるため、節税効果を得られるというものです。
ここでは、青色事業専従者給与を支払うための要件、ポイントについて説明します。

青色事業専従者給与を支払う際のポイント
① 青色事業専従者給与とは
青色申告を行なう人が、アパート・賃貸マンション経営に従事している同居家族に対して支払う給与のことをいいます。
白色申告の場合、「事業専従者控除」という制度がありますが、「事業専従者控除」の場合、配偶者86万円、その他の親族は50万円と上限が決まっているのに対し、「青色事業専従者給与」の場合は上限が定められていないため、適正な金額であれば、支払った額が全額必要経費となります。
② 青色事業専従者給与を支払うには
青色事業専従者給与を必要経費とするためには青色事業専従者給与に関する届出書を税務署に提出しなければなりません。
「青色事業専従者給与に関する届出書」は給与を支払う年の3月15日が提出期限ですが、新たにアパート・賃貸マンション経営を始めたときは、引渡しを受けてから2ヵ月以内に届出書を提出します。

③ 青色事業専従者給与を受け取る人の要件
青色事業専従者給与を受け取る人は次の要件を充たす必要があります。
・給与を支払う人と生計を一にする配偶者、その他の親族であること
・その年の12月31日時点で年齢が15歳以上であること
・その年を通じて6ヵ月を超える期間、その事業に専ら従事していること
専従者給与を受け取る人は、その事業に専ら従事する必要がありますので、会社員の方や自ら事業を行なっている人等に給与を支払っても原則として必要経費とすることができません。
④ 青色事業専従者給与を支払う人の要件
アパート・賃貸マンション経営を行なう方が青色事業専従者給与を支払う場合は「事業的規模(5棟10室以上)」を充たしている必要があります。
「事業的規模」を充たさずに青色事業専従者給与を支払っても必要経費とすることができません。
⑤ 配偶者控除、扶養控除との関連
青色事業専従者給与を1円でも受け取った人を配偶者控除や扶養控除の対象とすることはできません。そのため、専従者給与を支払う場合は、配偶者控除の額や扶養控除の額よりも大きな金額を支払わなければ節税となりません。
なお、平成29年度税制改正により、平成30年分の確定申告から合計所得金額が1,000万円を超える人は配偶者控除の適用を受けることができなくなります。今後、特に所得が高い方は専従者給与を支払う節税対策がより重要となります。

青色事業専従者給与のまとめ

青色事業専従者の要件
- ① 事業を営む者と生計を一にする配偶者その他親族であること。
- ② その年の末日(12月31日時点)で、年齢が15歳以上であること。
- ③ その年を通じて6ヵ月を越える期間、その事業に専ら従事していること。
- 注意!
- 青色事業専従者及び白色事業専従者は、配偶者控除・扶養控除の対象となりません!!
青色事業専従者給与の金額について

青色事業専従者給与には上限額はありませんが、適正な金額を超えた分については必要経費とすることができません。では適正額とはいくらなのでしょうか。
① 他人に支払うとした場合にいくら支払うか
家族だからといって不当に高い給与を支払うことはできません。
例えば同様の仕事を他人にしてもらってどの程度の給与を支払うかを考え、その金額に近い額で支払うことは合理的な設定の仕方と言えます。
ただし、事業専従者には経営を担う役割もありますので、一概に作業量のみで給与の額を決める必要はなく、共同経営者としての側面も給与の額に反映することはできると考えられます。
② 収入とのバランスを考える
収入に対して明らかに高い専従者給与を支払うことは難しいでしょう。
例えばアパート・賃貸マンション経営の収入が1,000万円の人が給与を500万円支払うのは、経営が成り立たないことになりますし、明らかに高いと言えます。
③ 源泉徴収税額が発生しない範囲で支払う
青色事業専従者給与についても、支払う給与の額によって所得税の源泉徴収をしなければなりません。
ただし、月額の支払い給与が88,000円未満であれば、源泉徴収の必要がないので事務負担が軽減されます。
また、その金額であれば不当に高い給与と指摘を受ける可能性も低いと思われます。
青色事業専従者給与を支払うことは効果的な節税対策の一つです。
ただし、業務の実態を伴わない場合にはせっかく支払っても必要経費と認められない場合もありますし、高い給与を支払うことによって支払う人の税金が安くなっても給与を受け取る人の税金が高くなり、結果として節税にならない場合もあります。
青色事業専従者給与を支払う際には、税理士等に相談の上、金額を設定することをおすすめします。