平成・令和時代の借家の歴史についてご紹介します。
日銀は平成元年から平成2年にかけて5回の公定歩合の引き上げを実施。さらに金融機関に対する不動産融資の総量規制を始めました。日経平均株価は平成元年12月29日に38,915円87銭と史上最高値を付けたあと、平成3年2月から急落を始め、ついにバブル経済の崩壊が始まりました。
その間に不動産価格は大きく値を下げ、神武景気以来の高度経済成長期に生まれもてはやされた「土地神話」も崩壊する結果となりました。
昭和58年後半に東京の都心部の商業地に端を発し、周辺部そして地方に波及した地価の高騰はバブル期に拍車がかかり、重大な社会問題として政府は対応を迫られていました。そこで平成3年の税制改正では、従来は土地政策の中では従的で補完的な手段として位置づけられていた土地税制を、土地政策の主役のひとつとして位置づけ、抜本的な見直しが実施されました。
税制改正では、土地保有税の強化のため、国税として「地価税」が創設されました。また、「市街化区域(注1)内農地の宅地並み課税」が実施され、「固定資産税」に関しては、従来の「長期営農継続農地制度」を平成3年度限りで廃止し、生産緑地(注2)指定のない農地に関しては平成4年度以降「宅地並み課税」が実施されることになりました。
(注1)市街化区域
都市計画区域のうちのひとつ。すでに現在市街地を形成している区域、または、線引きをされてから10年の間に市街化を図るべきと判断された区域で、大きく分けて住居系、商業系、工業系の三つの用途地域から成り、土地利用について細かく決められている。
(注2)生産緑地
面積が500平方メートル以上ある市街化区域内の農地などで、公害や災害の防止などに効用があり、自治体が指定した公園や緑地などの公共施設の敷地に適している土地。都市生活から緑がなくなることを防ぐと共に、食料生産の場所を確保しようという都市計画の一部として指定された。1991年9月の生産緑地法の改正で、市街化区域内の農地は保全する農地(生産緑地)と宅地化する農地(宅地化農地)とに区分された。生産緑地に指定されると、その土地は農地以外には使用できない。
「相続税」に関しても農地に関する相続税の納税猶予が見直され、生産緑地の指定のない農地については平成4年度以降、納税猶予の特例を廃止し、生産緑地内の農地で営農を継続する場合は引き続き納税猶予の特例を認めるものの、農業継続のチェックを厳格に行うこととなり、従来の「相続税20年間営農による猶予税額免除の特例」は廃止されました。
また、「特別土地保有税」も全般的に強化され、三大都市圏の特定市について10年間に限り、課税対象となる面積要件を引き下げるとともに、免除制度の対象から青空駐車場、資材置き場などを除外し、市街化区域内の土地についても、昭和57年(1982年)4月1日以後取得の土地に関し、保有期間10年超のものを課税の対象外とする措置が撤廃されました。
さらに、遊休地の利用転換を促進する目的で「遊休地土地転換利用促進地区」として都市計画決定された区域内の面積1,000平方メートル以上の一団の土地について、時価あるいは取得価格のいずれか高い金額を課税標準として保有にかかわる「特別土地保有税」を課税することとなりました。
「固定資産税」では評価の適正化が実施され、土地の評価を平成6年以降の評価替えにおいて、地価公示価格の7割程度を目標に上昇させるとともに、評価の均衡化も推進されました。
これらの土地税制では、強化と同時に、様々な税負担の軽減措置や特例などの優遇措置が設けられました。その中で、主に「相続税」「地価税」「固定資産税」については、優遇措置の適用を受ける目的(節税対策)で、所有地(遊休地)に借家を建てて、土地を活用する土地活用が、盛んに行われました。
また、「固定資産税」の評価額の上昇と、「生産緑地」の指定を受けない市街化区域内農地の「固定資産税」の宅地並み課税に対応した納税資金作りの他、「第二の年金」目的として数多くの賃貸住宅が建てられました。
平成5年、バブル経済崩壊後の不況で東京都内のオフィスの空室が増加し、12月には9.1%に達しました。
その後、ポストバブル期の平成11年、日銀は資金供給を大幅に増やし、デフレスパイラルに陥る懸念や金融不安を払拭するため、無担保コール翌日物の金利を大幅に下げ、仲介手数料と差し引きで金利を実質ゼロとする「ゼロ金利政策」を平成12年8月まで実施、その後、株価下落や不良債権問題による景気の先行き不安から、平成13年3月から再度実施し、加えて量的緩和政策も実施しました。
これらにより、金融機関からの借入金の返済金利が大幅に低下し、遊休土地などに金融機関などから借り入れた資金で借家を建てる借家経営の収益が向上し、土地資産を活用した賃貸住宅経営は高収益事業のひとつになりました。
平成9年、NTTの札幌の社宅に全戸パソコン、ケーブルアンテナ、携帯電話用アンテナなどを設置したマルチメディアマンションが完成しました。
平成10年、住宅都市整備公団が定期借地権方式による賃貸宅地の提供を開始しました。その後平成11年には、大阪市此花区に都市ガスを使った自家発電によりエレベーターや照明などに利用する省エネ型の高層賃貸住宅が誕生しました。
【特優賃】(注3)
平成12年、新借地借家法の趣旨をさらに進展させる目的で、期間の満了によって契約が終了となり、従来のような「契約の更新」を認めない定期借家制度(注4)がスタート。これにより、比較的面積が広く良質な賃貸住宅の供給促進が期待されています。
(注3)特定優良賃貸住宅制度(特優賃)
中堅所得者を入居対象とする優良な賃貸住宅の供給促進を図ることを目的とする制度。各自治体の長が認定した優良な賃貸マンションへの入居者様は、所得に応じて国や各自治体から家賃補助を受けることができる。この制度は、中堅ファミリー層向け賃貸住宅の居住水準を向上させるために設けられた。
(注4)定期借家制度
期間を定めて居住用建物や事業用建物を賃貸借契約し、期間の満了によって契約が終了となる制度。従来のような「契約の更新」がないのが特徴。
【特優賃】
平成13年には「高齢者の居住の安定確保に関する法律」が施行され、同法に基づき、民間活力の活用で良質な賃貸住宅の供給促進を図る「高齢者向け優良賃貸住宅制度(注5)」(高優賃)が誕生。
(注5)高齢者向け優良賃貸住宅制度(高優賃)
民間活力を活用し、60歳以上の単身・夫婦世帯を入居対象とする良質な賃貸住宅の供給促進を図ることを目的とする制度。「高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成13年公布)」に基づき制度化された。高齢者向け優良賃貸住宅を供給する事業者は、同法により各種の支援措置を受けることができる。
平成16年、ペットブームやガーデニングブームに対応した専用機能付賃貸住宅が登場しました。
昨今では、全国で大地震の発生予測がされる中、耐震性の高い賃貸建物に関心が集まっています。そこで、入居者様の生命・財産を守ると共に、安心で安定した賃貸経営の実現を目指し、耐震強度や耐久性を高めた高品質な賃貸建物が開発され、建設が進められています。
日本政府が「平成32年までに温室効果ガスを25%削減する」という目標(チャレンジ25キャンペーン)を全世界に表明したことで、地球温暖化対策推進の一環として「住宅エコポイント制度」が創設されました。
賃貸住宅に機能性が求められるようになり、小さなお子様から高齢者の方まで、誰もが安心・安全・快適に暮らすことができるバリアフリー賃貸住宅が登場しました。少子高齢化により持ち家、分譲住宅がともに減少するなか、人気を集めています。
2011年(平成23年)に「高齢者住まい法」が改正され、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」制度が新しく導入されました。安否確認や生活相談など、高齢者向けのサービス提供が義務付けられています。
それまで運用されてきた「高専賃(高齢者専用賃貸住宅)」、「高優賃(高齢者優良賃貸住宅)」、「高円賃(高齢者円滑入居賃貸住宅)」は本制度に一本化されました。
2011年の東日本大震災を受け「復興支援・住宅エコポイント制度」が新たにスタート。目的や対象となる住宅など、以前の「住宅エコポイント制度」とほぼ同様の主旨となっていますが、ポイント交換対象として被災地の商品や被災地への寄付など、復興支援のための項目が追加されました。
2011年の東日本大震災を受け、高台の無い沿岸部地域において、各地方自治体の定める「津波避難ビル(垂直避難ビル)」の認定基準を満たした、「津波避難マンション」が登場しました。
子供の安全や子育てママの身体的・心理的な軽減を図った「子育て賃貸住宅」が登場しました。
室内外の段差を解消し、ベビーカーでもヨチヨチ歩きのお子様でもラクラク移動。バリアフリー設計で、誰もが安心・安全・快適に暮らせます。
2017年10月、「住宅確保要配慮者(※)」が入居しやすい賃貸住宅の供給促進を図ることを目的に、「住宅セーフティネット法」の改正法が施行。改正法では、主に①住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録制度、②登録住宅の改修や入居者様への経済的支援、③住宅確保要配慮者への入居支援が加わりました。
※ 高齢者世帯、障碍者世帯、子育て世帯、被災者世帯、低所得世帯などのこと。
2017年10月、「住宅セーフティネット法」の改正法施行に伴い、「家賃債務保証業者登録制度」が創設され、任意登録の申請受付がスタート。登録した家賃債務保証業者が住宅確保要配慮者に保証する際、住宅金融支援機構の家賃債務保証保険の対象となる他、低額所得者が入居する場合の保証料の補助対象になりました。
2017年10月より、オンラインシステムを活用した非対面での重要事項説明「IT重説」が認められるようになりました。
2017年5月の民法改正と、近年の家賃債務保証業者を利用した賃貸借契約の増加等を踏まえ、国交省は2018年3月に「賃貸住宅標準契約書」を改訂。主に①敷金、及び原状回復に関する事項、②連帯保証人保護に関する事項、③建物の修繕に関する事項が改訂されました。
民泊サービスの適正な運営を確保し、民泊の健全な普及を図ることを目的に、2018年6月、「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が施行。全国的に民泊が可能になりました。
2021年6月、不動産業者とオーナー様とのトラブルを防止し、オーナー様の利益を守る目的で、「賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)」が施行。
サブリース営業の規制・罰則が設けられ、一定規模以上の賃貸住宅管理業者は、賃貸管理業登録が義務付けられました。
「賃貸不動産経営管理士」の資格が、2021年度以降の試験から国家資格として法制化されました。①賃貸住宅ニーズや空き家等の増加による物件の維持管理・活用などを行う賃貸住宅管理の重要性が高まっていること、また②賃貸住宅の受託管理・サブリース契約が増えていることから、オーナー様と入居者様との間に入って公正中立な立場から問題解決を図ることが目的です。
2022年5月に施行された宅建業法の改正により、不動産取引の電子契約化が可能になりました。「重要事項説明書」と「宅地建物の売買・交換・賃貸借契約書」に対する宅建士の押印義務が廃止されたのです。また、不動産取引で発生する書面(※)は、相手方の承諾があれば電磁的取引(電子ファイル)での交付が認められるようになりました。
※① 媒介・代理契約締結時の交付書面、② 指定流通機構(レインズ)登録時の交付書面、
③ 重要事項説明書、④ 宅地建物の売買・交換・賃貸借契約等締結後の交付書面の4つ
土地活用や賃貸マンション・アパート経営をお考えなら、土地活用のパイオニア「東建コーポレーション」にお任せ下さい。平成に入り借家は大きな進化を遂げます。バリアフリーや専用機能付賃貸物件など、様々な需要に応えた物件が登場し、それに伴って土地活用として賃貸マンション・アパート経営を考える方も増加しました。こちらのページには、平成・令和時代の借家や土地に関する歴史について時系列順で分かりやすくまとめました。ぜひご覧頂き、借家経営にお役立て下さい。東建コーポレーションは、土地活用・不動産経営のプロとして、オーナー様のご希望に添った土地の有効活用をご提案致します。