建築施工マニュアル


4.溶接
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    柱・梁などの工事場溶接の溶接工法及びその管理方法についての要領を示す。
  [1] 溶接工法
    溶接工法は図1による。なお「共仕」7章にはの工法が定められている。

 
 
溶接法(抜粋)

  [2] 溶接施工管理技術者
   

「溶接施工管理技術者」は(社)日本溶接協会で認定したWES8103(構造物の溶接施工及び管理に関する技術者の資格認定基準)による「溶接技術者」の資格を有するものと「共仕」7.6.2で定められている。

尚、溶接技能者の技術検定基準であるJISには、手溶接の場合はJIS Z 3801 及び半自動の場合はJIS Z3841で定められている。


  参考の為に、日本工業規格JIS Z 3801の溶接姿勢を図2に示す。


 
 
板の突合せ溶接姿勢(JIS Z 3801)


  [1] 自動アーク溶接 ……

溶接ワイヤの送りが自動的にでき、常時操作しなくても連続的に溶接が進行するような装置を用いて行うアーク溶接。


  [2] 半自動アーク溶接 …… 溶接ワイヤの送りが自動的にできるような装置を用い、溶接頭部の移動は手で行うアーク溶接。

  [3] サブマージアーク溶接 …… 溶接ワイヤと母材間のアークから生じるアーク熱で溶接する方法で、フラックス中で行われる。組立H形鋼や組立箱断面柱の製作によく利用される。

  [4] ガスシールドアーク溶接 …… ワイヤは自動的にトーチのノズルから供給され、アークを主として炭酸ガスでシールドしながら、作業者の手の操作によって行うアーク溶接。

  [5] エレクトロスラグ溶接 ……

溶接スラグと溶接金属が溶接部から流れ出ないように囲み、溶融したスラグ浴の中に溶接用ワイヤを連続的に供給し、主として溶融スラグの抵抗熱によって溶接用ワイヤと母材を溶融して行う上進溶接。組立箱断面柱のダイアフラムの溶接などに用いられる。


  [6] セルフシールドアーク溶接 …… 外部からシールドガスを供給しないで、特殊な成分のワイヤ又はフラックスを巻込んだワイヤを用いて行うアーク溶接。工事現場での溶接に適した工法である。

  [7] スタッド溶接 …… ボルト、丸棒などの先端と母材の間にアークを発生させ、加圧して行う溶接。

  [8] 裏溶接 …… 片面グループ溶接の場合で、表を溶接した後、裏から行う小ビードの溶接。

  [9] 裏当て金 …… 母材と同質のフラットバーを使用する。できるだけ断面の四隅が鋭角なものを選ぶことが重要。

  [10] エンドタブ ……

ビードの始点と終点に取付ける開先と同形に加工した補助板。
溶接スタート時は、アークが不安定なため、溶け込み不良や、スラグ巻込みなど溶接欠陥が生じやすい。これらの溶接欠陥が母材内に残らないために取付けたもの。溶接完了後は母材より5mm程度残してガス切断し、ディスクサンダー仕上げするのが一般的である。


  [11] スカラップ …… 溶接線の交差を避けるために部材に設ける扇形の切欠き。
溶接割れ、スラグ巻込みなどの欠陥防止が目的である。
JASS 6に推奨ディティールが示されている。


 












ガスシールドアーク溶接



裏当て金


エンドタブ

 


スカラップ
  [12] 脚長 …… 継手のルートから隅肉溶接の止端までの距離。

  [13] 開先(グルーブ) …… 接合する二部材の間に設ける溝。
板厚9mm以上の完全溶け込み溶接では、必ず開先加工をしないと手溶接・半自動溶接では完全な溶け込みが得られない。

 
 
 
鋼 板

コラム


  [1] 溶接管理者
    1. 溶接施工にあたり、溶接管理者を定め、工程管理、品質管理、及び溶接工の指導にあたらせる。

  [2] 溶接材料の管理
    1. 溶接材料は、吸湿のおそれのない場所(コンテナなど)に保管し、必要量だけ溶接場所に持参する。
    2. 被覆アーク溶接棒のうち、被覆材の破損もしくは変質したものは使用しない。
    3. 溶接棒は、必ず乾燥したものを使用する。

  [3] 溶接機の保守点検
    1. 溶接機は、点検済のものを持ち込み、使用許可書をうけて使用する。
    2. 毎日使用前に、必要箇所の点検を行ない、故障による作業の遅延を生じさせないようにする。特に半自動溶接装置の点検は念入りに行う。

[4] 天候管理
    1. 降雨、降雪中は作業を行わない。又、降雨、降雪後に溶接を行う場合は、開先部をガスバーナなどにより乾燥させた後に行う。
    2. 気温が0℃以下の場合は、原則として作業を行わない。ただし、0℃以下の場合でも溶接作業に支障のないことが確認され、かつ所定の予熱温度が確保される場合は、係員と協議のうえ、溶接を行うことがある。
    3. 湿度が90%を超える場合は、原則として作業を行わない。
    4. 夕立などの急激な降雨でやむを得ず溶接を途中で中止する必要の生じた場合、溶接が板厚の1/2以下の場合は溶接部に雨がかからないような処置を行ない溶接を継続する。又、一溶接線の途中で止めずに溶接線全長にわたって完了させる。溶接中断後、雨水で溶接部が急冷しないよう注意する。

  [5] 開先管理
    1. 溶接に先立ち、溶接管理者は下記の項目の検査を行う。(別-1)
      (ⅰ) ルートギャップ
      (ⅱ) 目違い
      (ⅲ) 溶接部の発せい、及び不純物の付着
      (ⅳ) その他溶接欠陥を誘発させるノッチなどの有無
    2. 溶接管理者は、検査結果の注意事項を開先近傍にチョークなどにより記入し、溶接工に明示する。

  [6] 風防装置の確認
    1. 溶接に先立ち半自動溶接時に使用する風防装置の取付けの有無、及び安全状態を確認する。

  [7] 溶接管理の報告
    溶接施工においては、溶接管理者を定め本要領書に従い溶接条件、その他全般的な管理指導を行う。又、主要な溶接部分については、下記の事項を溶接施工管理報告書に記入し、提出する。

  1. 溶接工氏名
  2. 溶接月日
  3. 溶接箇所
  4. 板厚・予熱温度
  5. ルートギャップ
  6. 天候・気温・湿度・風速
  7. 溶接条件

 
  [1] 一般事項
    1. 柱溶接・梁溶接の継手共、当該部の高力ボルトの本締め完了後に溶接する。
    2. 溶接は、開始より終了まで連続して行うことを原則とする.

  [2] 溶接作業上の注意事項
    1. 溶接前
    (ⅰ) 溶接施工管理者は、溶接作業着手前に溶接電流、電圧の目標値を各溶接工に熟知させる。
    (ⅱ) 溶接に先立ち、開先面をワイヤブラシなどで十分に清掃し、必要な場合は予熱を行う。
    (ⅲ) 母材上にアークストライクを発生させないよう十分注意する。
    (ⅳ) 溶接に先立ち、開先面、裏当てにスラグ・さび・油類・水分・はがれやすいミルスケールなどが付着している場合には清掃するとともに、油・水分などはガスバーナにより加熱除去する。
    2. 溶接中
    (ⅰ) 溶接欠陥防止のため、溶込みに十分注意し、標準溶接条件の選定と、溶接姿勢を適正にして施工する。
    (ⅱ) 安定した溶接を行うため、下記の項目について十分点検し確認を行ない、常に適正な条件で施工する。
  (a) 炭酸ガスシールドの状態(流量・風速)
  (b) ワイヤの送給の状態(トーチケーブルの曲り・チップの磨耗)
  (c) 電流・電圧・溶接速度
  (d) ワイヤエクステンション
  (e) トーチ狙い、及びトーチ角度
    (ⅲ) 溶接中の外観検査は、溶接工自身が一層ごとに行ない、欠陥のないことを確認のうえ、次の層の溶接を行う。又、被覆アーク溶接などでは、スラグの除去を入念に行う。
    (ⅳ) 気象条件その他の原因で溶接を中断した後、再開する場合は、下記の項目について確認した後で行う。
  (a) 溶接欠陥のないことを確認する(目視)
  (b) 所定の予熱管理を行う。
  (c) 溶接部をよく清掃する。
    3. 柱の溶接要領
    (ⅰ) 溶接時期は、その柱継手部の高力ボルト本締め、及びその柱と取り合う最上階梁の高力ボルト本締め完了後とする。
    (ⅱ) 溶接はひずみなどを考慮して溶接工2名による対称溶接を原則とする。
    (ⅲ) 4方向に取り付けられたエレクションピースは、柱溶接が、板厚の1/2以上完了した後、母材を傷つけないよう、15mm程度残してガス切断する。
    (ⅳ) エンドタブは特に支障のない限り取付けたままとする。
    4. 梁の溶接要領
  (ⅰ) 溶接時期は高力ボルト本締め完了後とする。
  (ⅱ) 溶接順序は、下フランジ溶接完了後、上フランジの溶接を行う。
  (ⅲ) エンドタブは特に支障のない限り取付けたままとする。

 
  [3] 溶接検査
    1. 外観検査
    (ⅰ) 溶接管理者は、溶接完了後、全数の外観検査を目視により行う。
    (ⅱ) 外観検査の検査項目は次のとおりである。
  (a) われの有無
  (b) アンダカット・オーバラップの有無
  (c) ビード始終端の良否
  (d) その他の欠陥の有無
  なお、われが発見された場合は係員に報告する。
(ⅲ) 外観検査の検査方法及び許容差は別-2による。
    2. 超音波探傷試験(UT)
    (ⅰ)

溶接部分に探蝕子をあて、探蝕子から発信される超音波の反射波の状態をブラウン管上に描かせ、エコーの高さ、位置などにより溶接部の欠陥を発見する方法である。

    (ⅱ) 超音波探傷法には、垂直探傷法と斜角探傷法(屈折角45度又は70度)があり、一般には探触子一個又は二個(タンデム法という)の斜角探傷法が多く用いられている。
    (ⅱ) 特記がある場合は、(UT)を行ない、検査報告書を提出させる。
検 査