建築施工マニュアル


2.植栽
下のリストボックスから項目を選択すると、各項目へジャンプすることができます。
写真をクリックすると大きい写真を表示できます。
  植栽計画は、植えられた植物によって創り出される「空間」と「景観」をデザインすることであり、周辺の環境向上や建物の付加価値を高める上において最も重要であると思われます。建築作品全体のイメージを向上させる工事です。
 
植 栽


  [1] 基盤計画のポイント
    1.有効土層厚
      植物が健全に生育するためには土層厚が必要である。
      植物の種類に応じた土層厚が確保されているか?
      →不足の場合は、盛土・客土工法などで有効土層厚を確保する。

※別図 ( 図5 植物の大きさによる必要土壌厚さ )参照

    2.排水性
      花壇などを造った時など、土壌からの排水は良いか?
      →排水工法・土壌改良工法などにより、排水性・透水性の改良を行う。

    3.法面勾配・他
      法面勾配によっては植樹が制約されるので、その植栽可能樹木を把握し確認する。


 
植 栽
 
法面勾配と植栽可能樹木


  [2]機能計画のポイント
    1. 境界植栽
      境界部分に植栽し出入り防止や、内部の領域感の意識など敷地の内外部を仕切る目的の植栽である。
      生垣又は、列植などの整形式植栽とするか? 自然風植栽とするか?
        ⅰ) 生垣 : 萌芽力が強く、刈込みの出来る植樹を選択。
          維持管理が必要。(整形姿態までに約5年程掛かる)
          四つ目垣などの補助施設S1で苗木を結束する。
          ※1 別図( 生垣のつくり方 図1、図2、図4) 参照
        ⅱ) 列植 : 樹種は、常緑樹を主に選択。
          目隠しなどの機能として利用が多い。
          枝葉の密生した下枝の下りにくい中高木を寄せて植栽する。
          布掛け垣などの補助施設S2で苗木を結束する。
          ※2 別図 (生垣のつくり方 図3、 図4)参照

    2. 遮蔽植栽
      施設を隠したり、見せたくない場所などを遮蔽する目的の植栽です。
      下枝の枯上がりにくい中木樹種と耐陰性の強い低木樹種を選択。
      植栽は、中木樹と低木樹の混種配植構成が良い。

    3. 防風植栽
      季節風などの寒風や強風での飛砂防止・防雪防止などの目的の植栽です。
      耐風性・枝葉の密生する深根性常緑樹を選択。
      風向きに対して直角に配植する。
      防風林は、風上側に低木植・風下側に高木植の構成が良い。

    4. 防音植栽
      騒音を緩和する目的の植栽です。
      下枝が低く、枝葉が密の常緑樹を選択。
      植栽は、高木、中木、低木の多層植栽が良い。
      植巾は、厚い程良い。(巾30cm以上、塀などと併用すると効果が大きい。)

    5. 防火植栽
      火災の延焼防止・火の粉の阻止などを目的の植栽です。
      防火樹は、枝葉の密生した含水量が高く葉肉の厚い常緑樹を選択。(クロガネモチ・ヒサカキ・サザンカ・マサキ・サンゴジュ・ヒイラギ・カシ類など )
      耐火樹は、樹皮が厚くコルク層で保護された萌芽性の強い常緑樹を選択。(サザンカ・サンゴジュ・シラカシ・マテバシィー・ヒサカキ・マサキなど )
      樹木を、程良い空地を設けて低木・中木・高木の多層配植裁する。

    6. 防潮植栽
      潮風に対する防風を目的とした植栽です。
      植栽は、高木・中木・低木の多層配植栽とし、密に植栽する。
      耐潮性のある常緑樹種を選択。(シャリンバイ・コクチナシ・マテバシィー・ネズミモチ・アラカシなど )
    7. プライバシィー保護植栽
      外周部の生活環境保全機能をもたせ、内部に日照やプライバシィー保護を配慮した植栽です。
      車庫やアプローチなどの境には、1階のプライバシィー保護のために生垣や列植を設ける。


  [3] 景観計画のポイント
    植栽景観の基本は、『植物が健全に生育し建物と周辺が調和する環境創り』 を主眼とする。
      1. 地域及び周辺景観との調和。
      2. 部分景観と全体景観との調和。
      3. 維持管理への配慮 (植栽後の管理体制や方法、費用などの検討 )。
      4. 景観構成(イメージ )T管理上常緑樹を中心とした構成をのぞむ。
          ⅰ) 整形式配植か?
          ⅱ) 不整形式配植か?
          シンメトリー(対象)・ バランス(釣合い)・プロポーション(比例・割合) リズム(律動)・ムーブメント(気勢)・エンファシス(強調)などを考え、空間の 取り方・意匠の変化・スカイライン・ランドマークなどを考慮する。


  [4] 樹種選定計画のポイント   図1  樹種選定計画フロ-チャート参照
    1. 適応樹木
      本マニュアルは、樹木が植栽できる具体的な地域を示す指標 クライメートゾーン (植栽適温帯)に基づき、予め樹木を全国5つの地区に分けて選定してあります。

    2. 環境条件など植栽対象地
      外周、住棟周り、アプローチ廻り、駐車場などの対象地をチェックする。
      乾湿などの土壌・日照・風などの耐性、環境要求度をチェックする。

      外周植栽地 : ⅰ) 集合住宅地全体に対する生活環境保全と地域景観の向上から、修景植栽を行う。
          ⅱ) ビル風など常に風が吹く場合は、活着しない事もあるので風道や、強さなどについて確認し対策する。

      南側植栽地 : ⅰ) 樹木の生長による日照阻害に注意する。
          ⅱ) 生長の早い樹木、大木となる樹木は、スペースの広い場所を選ぶ。
          ⅲ) 高木の植栽位置は、住棟から成るべく5m以上離すと良い。
          ⅳ) 生長の早い樹木の寄植えや、狭小地での大木となる樹木は避ける。
          ⅴ) 完成スタイルになる様な過密な配植をしない。

      北側植栽地 : ⅰ) 日当たりが悪く、地下埋設物などがあり狭小の植栽スペースとなっている場合が多い。玄関的な役割の植栽には、特に配慮選定する。
          ⅱ) 過密な植栽を行うと通風の悪さなどから病虫害の発生率が高くなる。

      妻側植栽地  :
主木や景観木など景観的植栽を行う。
      アプローチ他 :
の植栽地
景観性を重視した植栽で四季の花木・芳香樹や主木・景観木などを選定の植栽地 し全体の統一を計る。

      駐車場植栽地 : 外部からの見通しを考慮した明るい植栽景観の創出、植樹選定をする。


    3. 植栽(植樹)時期
      施工時期が移植適期であるか!ない場合の対策をチェックする。

    4. 管理条件
      選定樹木が病・害虫対策・剪定必要度など将来予測される管理状態を予めチェックしておく。
      管理の容易な樹種を選定する。
      高度な剪定を要する樹種は避ける。

    5. 市場性のチェック
    本マニュアルでの樹木は、あらかじめ常緑種を主に、一般(北海道、沖縄を除く)の市場で出廻っている物を中心に選定しておりますが、その地域での樹木の品質、規格、数量、植栽時期、栽培現場などで確認(公共的な緑化に使用する標準的な樹木)するなど十分なチェックが必要です。

    6. 樹種の選定計画フロー図

 
 
樹種選定計画フローチャート

 


      養分不足……… 植栽の条件などにより、養分不足が予想される場合は、先ず施肥 工法などにより養分補給対策を行う。


  [5] 維持・管理計画のポイント
      付近の環境向上や建物の付加価値を高める目的とした機能や景観を実施し、適正に 維持していくための計画です。
        植栽地固有の管理をし良好な植栽景観の創出を行う。

 
管理計画フローチャート

……… 植物が健全に生育する管理
  (施肥・灌水・病虫害防除・気候の保護)
……… 防音や防風、遮蔽環境などを目的とした植樹が当所の目的とする植栽機能を維持するための管理
……… シンボルツリーや建物との調和を図る目的とした植栽景観を創出、維持するための管理
……… 植栽時から、外部環境圧からなどの保護活着を促進するための管理
……… 丸太・竹支柱他(四つ目垣型、布掛け型、鳥居型、八ツ掛け型など)
……… 太陽の日焼け、冬の凍害、霜割れ防止(樹木の樹幹をわら、こも、緑化テープなどで保護)
……… 植栽地表面の直射日光を遮断土壌の乾燥防止、地温の急変抑制、雑草などの発生抑制などを図る。 (わら、木材チップ、バーク堆肥など)
……… 不適期の植栽、暖地産樹木を冬期に栽植する場合の保護方法。(植栽時の寒さ、風の乾燥から樹木全体を覆い保護する。アラカシ、マテバシィなど)

 
植栽の年間の手入れ時期


 
品質の表示項目
    樹木の品質は樹姿と樹勢に大別し、項目にしたがって確認する。
    [1] 樹姿:樹形(全形)、幹(高木のみに適用)、枝葉の配分、枝葉の密度、枝下など。
    [2] 樹勢:生育、根、根鉢、葉、樹皮(肌)、枝、病虫害など。

 
 
品質規格確認基準 樹姿

 
品質規格確認基準 樹勢