草庵らしい端正な構成美
再興された本法寺前の千家に、少庵は二つの茶室を建てていたが、このいずれかに「不審庵」の額が掲げられていた。
現在の不審庵は明治38年焼失ののち、大正2年に再建されたものである。
南向きに立ち、柿葺切妻(こけらぶききりつま)造りの全面に庇(ひさし)をつけおろし、点前座の部分は西流れの片屋根をたて、変化に富む屋根の構成は、軽快な草庵茶室の典型と言える。
内部は平三畳台目(ひらさんじょうだいめ)で、正面に床を設け床脇(とこわき)に給仕口をあけている。床柱は赤松皮付、床框(とこがまち)は入筋の北山丸太を用いており、まさに千家流の定石ともいうべき侘びた取り合わせである。天井は床側を蒲天井(がまてんじょう)、躙口側(にじりぐちがわ)が化粧屋根裏、点前座も化粧屋根裏という複雑な構成で、それらの重なるところにまっすぐな赤松の中柱が立ち上がり、草庵らしい端正な構成美をみせている。