土地活用 アパート経営ガイド -アパート経営編-

2.事業計画を立案する

アパート建築の資金計画

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建物建築を伴う土地活用の場合、金融機関から融資を受けて資金調達を行うのが一般的です。
アパート経営の場合、建築費用の他にも各種申請にかかる費用や税金なども、初期費用として必要になります。
ここでは、アパート経営の初期費用の種類と資金計画についてご紹介します。

アパート建築資金の内容

アパートを建てるために必要となる建築資金としては、一般的に建物本体の工事費用だけでなく、外構工事を始めとする附属・附帯工事費用、各種申請にかかる諸経費、税金などがあります。土地の広さや使用目的によっても様々な費用がかかってきますので、資金計画を立てる際には十分に確認しましょう。

なお、主な建築資金や諸費用については、次のようになります。

アパート建築資金の内容

費用の内容 主な費用 支払先
建築本体工事
(建物設備を含む)
  • ・本体工事費
  • ・設計監理費
  • ・建築確認申請等手数料
建設会社
附属・附帯工事
(外構工事など)
  • ・アスファルト舗装費用
  • ・門、フェンス(塀)などの工事費用
  • ・庭園、植栽費用
  • ・解体費用(既存の建物を取り壊す場合)
  • ・地盤改良費用
建設会社、外構(エクステリア)工事業者など
諸経費
  • ・農地転用申請費用
  • ・開発許可申請費用
  • ・所有権登記等手続代行手数料
  • ・表示登記手続代行手数料
  • ・水道負担金
  • ・融資保証料など
  • ・火災保険料
  • ・近隣対策費

市区町村、都道府県、司法書士、

土地家屋調査士、水道局、金融機関(保証会社)、損害保険会社など

税金など
  • ・不動産取得税
  • ・登録免許税
  • ・印紙税
都道府県税事務所、法務局

資金計画作成のポイント

必要となる建築資金を把握したら、次に、具体的に資金をどのように調達するかという「資金計画」を作成します。ここでは、資金計画を作成する際の3つのポイントをご紹介します。

1返済期間は「短期」か「長期」か?

相続税対策を目的として、アパート経営を行なう場合は、借入金の返済期間を30~35年という「長期」にわたって設定するケースが一般的です。

しかし、土地活用に対するニーズが多様化する中で、返済期間を「短期」に設定するケースも増えています。

事業の目的と照らし合わせ、適正な返済期間を選択しましょう。

資金計画作成のポイント

2自己資金と借入金の割合は?

資金計画を立てる上で最初に考えておきたいのが、自分で用意する「自己資金」と、公的機関や民間金融機関などから借入れる「借入金」との割合です。担保評価によっては、アパートの建設に必要な資金を全額借入れることも可能ですが、必要資金の10~20%を自己資金として用意するケースが一般的です。

自己資金を投入することによって、金利負担や月々の返済額が減少し、収益性も向上します。

また、土地活用の目的によっては、借入金の割合を大きくした方が良いケースもあります。

資金計画は、税理士などの専門家や金融機関などに相談することをおすすめします。

全額借入・一部借入(一部自己資金)・全額自己資金によるメリット・デメリット

資金計画 メリット デメリット
全額借入
  • ・相続発生時に相続財産から借入残高を債務として控除できるため、相続税対策になる。
  • ・支払金利を必要経費として計上できるため、不動産所得の抑制が可能。
  • ・元利均等返済の場合、利息の支払いが多く、元金がなかなか減らない。
  • ・借入返済額が多いため、収益性が低くなる。
一部借入・
一部自己資金
  • ・借入返済額(金利負担)が少なくなるため、収益性が高まる。
  • ・金融機関からの資金調達がしやすくなる。
全額自己資金
  • ・返済金がないため、高い収益性が確保できる。
  • ・ローンがないので、将来、入居が苦戦した場合でも家賃を下げられる。
  • ・借入がないため、損益通算や債務控除による節税効果が低い。

3「固定金利型」か「変動金利型」か

アパートローンには、「固定金利型」、「変動金利型」、固定金利と変動金利をミックスした「固定金利選択型」があり、それぞれ次のような特徴やメリット・デメリットがあります。一般的に、金利の上昇期には「固定金利型の長期」を選択し、金利の下降期には「変動金利型」を選択すると良いと言われています。

ローンを組む際には、金利や経済情勢などを考慮した上で選ぶと良いでしょう。

アパートローン金利の比較

固定金利型 変動金利型 固定金利選択型
特 徴 借入れたときの金利が全借入れ期間を通じて同じ。 借入金利はその時点の長期貸出市場金利に連動する。通常は、固定金利より金利は低い。 借入開始後、2~10年間を固定金利とし、期間経過後は、再び固定金利か変動金利かを選択する。
メリット 低金利時に借りた場合、将来の金利上昇のリスクを回避できる。また、返済額が確定するため、返済計画が立てやすい。 金利が低い状況が続く局面では、低金利のメリットを享受できる。 金利が低い状況が続く局面では、低金利のメリットを享受できる。
デメリット 高金利時に借りた場合、金利低下のリスクを負う。金利が低下し始めた時点で変動金利への借換えを検討する必要がある。 低金利時に借りた場合は、将来の金利上昇リスクがあるため、借入期間が長いローンの場合、返済負担が増加する可能性がある。 固定金利の期間中は変動型などに変更できない。
固定金利の期間経過後に金利が上昇した場合、返済額が急激に増加するリスクがある。
固定金利型 変動金利型 固定金利選択型

金融機関の種類

アパートの資金計画がまとまったら、資金の借入れを行なう金融機関を選定します。資金の借入れ先には、公的金融機関と民間金融機関の2種類があり、主な金融機関には次のようなものがあります。

金融機関の種類

1公的金融機関の特徴と融資条件

公的金融機関は、主に経済社会の発展や国民生活の安定などを目的として、一般の金融機関では困難な融資を行なうなど、民間金融機関の不備を補完・奨励するために設置されています。

公的金融機関から融資を受ける際の主なメリットとしては、長期固定金利で安定した経営ができること、独自の建築基準などでチェックされるため良質なアパートができること、格安な特約火災保険に加入できるため、初期コストが軽減できることなどがあります。

住宅金融支援機構

代表的な公的金融機関です。平成19年4月に「住宅金融公庫」から「独立行政法人 住宅金融支援機構」に名称変更しました。賃貸住宅向けの融資商品としては、子育て中の家庭向けの物件を対象とした「子育て世帯向け省エネ賃貸住宅建設融資」と、高齢者向けの物件を対象とした「サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資」、整備改善を図る必要がある区域の建替えを対象とした「まちづくり融資」の融資プランがあります。また、賃貸物件のリフォームを対象とした「賃貸住宅リフォーム融資」などの融資プランもあります。

住宅金融支援機構の融資条件は、次のようになります。

住宅金融支援機構の融資条件

融資対象者
  • ・土地、または借地権(地上権・貸借権)所有者。
  • ・融資額の返済を確実にできる見込みのある方。
  • ・日本国籍の個人、または法人の方、及び永住許可者など。
  • ・お申込みの方の年齢が65歳以上の場合は、原則として後継者と連名により申込める方。
  • ・法人で申込む場合には、原則として法人の代表者を申込人に追加できる方。
融資限度額

住宅部分、及び非住宅部分(建物延べ面積の4分の1未満)を融資対象部分とし、対象事業費(建設費、除却工事費、土地取得費、諸経費など)の100%を上限とする。

※非住宅部分が4分の1以上の場合は、住宅部分のみ対象。

返済期間 上限35年(非住宅部分含む)
返済方法 元利均等返済方式、もしくは元金均等返済方式
金 利 固定金利型
保証人 原則として、住宅金融支援機構指定の保証機関による保証、または十分な資力のある個人の連帯保証人(2人)
担 保 融資の対象となる建物、及び敷地に第1順位の抵当権を設定

2民間金融機関の特徴と融資条件

民間金融機関のアパートローンは、住宅ローンに準じて実施されているケースが一般的です。住宅金融支援機構を始めとする公的金融機関とは異なり、建設基準の適合などの制約がないため、幅広いケースに対応できるのがメリットです。

アパートローンを取り扱っている民間金融機関には、銀行(都市銀行・信託銀行・地方銀行)や信用金庫、農協などがあり、それぞれの特徴と融資条件は、次のようになります。

銀行

・都市銀行

東京や大阪などに本店を置き、全国規模で業務を展開している普通銀行です。代表的なものに三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行・りそな銀行などがあります。

主なメリットとして、地方銀行や信用金庫と比較して、金利優遇の幅が大きいこと、全国の主要都市にローンセンターが設置されており、幅広いエリアでローンが利用できることなどがあります。

・信託銀行

信託業と銀行業とを兼営する銀行の中で、委託者の要望に応じて、財産の管理や計算・運用を行なう「信託業務」を主な業務とする銀行です。

信託銀行におけるアパートローンは、資産家を取り込むためのサービスとしての位置付けが強く、融資を審査する際には、物件そのものの収益性ではなく、借り手の資産背景や属性が大きな要素となります。

・地方銀行

各都道府県に本店を置き、本店のあるエリアを中心に営業を展開している普通銀行です。アパートローンに対して積極的に取り組んでおり、都市銀行よりも対応が柔軟で、長期間にわたり付き合う場合に適しています。

ただし、都市銀行と比べて支店数が少ないため、利用できるエリアは限定されます。

信用金庫

一定の区域内に在住・在勤者が会員となって出資している、信用金庫法に基づいて設立された金融機関で、融資は原則として、各信用金庫の会員を対象として行なっています。

地方銀行よりさらに地元に密着して融資を行なう傾向にあり、対応も柔軟です。地方銀行と同様、支店数が少ないため、利用できるエリアには限りがあります。

信用金庫

銀行・信用金庫の融資条件の一例

融資対象者
  • ・土地を所有している満20歳以上の方。
  • ・保証会社の保証を受けられる方。
  • ・法人や土地購入予定者など。

※金融機関によって異なる

融資限度額

100万円以上3億円以内が主。

※金額は建築計画によって異なる。建築費の範囲内が一般的。

返済期間

1年以上30~35年が主。

※金融機関によっては、40年も可能な場合がある。

返済方法 元利均等返済方式が主だが、元金均等返済方式もある。
金 利 変動金利型、固定金利型、固定金利選択型
保証人

金融機関指定の保証会社による保証

(金融機関によっては、連帯保証人が必要)

担 保

原則、融資の対象となる建物、及び敷地に第1順位の抵当権を設定。

ただし、住宅金融支援機構併用融資の場合は第2順位となる。

農協

農業に従事する人たちで構成された協同組合で、JAバンクを組織し、農業を営む方のほとんどが組合員となっているため、農家のオーナー様には利用しやすい金融機関です。一定の手続きをすれば、組合員以外の方も利用できます。

ただし、JAバンクは、各地域でそれぞれ独立しているため、地域ごとに融資条件が違ったり、地域によってはアパートローンの取り扱いがない場合があります。

農協

農協の融資条件

融資対象者
  • ・原則、農協組合員の方。(組合員以外の方も対象とする農協もある。)
  • ・原則、農協の営業地域に居住、または建設予定地のある方。
  • ・融資時に満20歳以上66歳未満で最終返済時に満71歳未満の方。
    (事業継承人が連帯債務者、または連帯保証人となる場合は、この限りではない。)
  • ・前年度の年収(税込)が150万円以上の方。
  • ・保証機関の保証を受けられる方。
  • ・その他、農協が定める条件を満たしている方。

※融資条件は各農協によって異なる。

融資限度額

原則、100万円以上4億円以内。(担保価値の範囲内、年間元利返済額が原則として年間賃貸収入見込額の75%以内。)

※融資条件は各農協によって異なる。

返済期間

非堅固建物(木造など)は1年以上25年以内、準耐火構造建物は1年以上30年以内、堅固建物(鉄骨造など)は1年以上35年以内。

※融資条件は各農協によって異なる。

返済方法 元利均等返済方式が主だが、元金均等返済方式もある。
金 利 変動金利型、固定金利型、固定金利選択型(当初2~10年の固定金利を選択できる)
保証人

農協指定機関による保証、または連帯保証人

担 保

原則、融資の対象となる建物、及び敷地に第1順位の抵当権を設定。

建物は農協共済(火災)に加入の上、その共済金請求権の上に質権を設定する。

金融機関の選び方

金融機関の選定は、現在の金融機関との取引状況や、様々な金融機関の融資条件を収集し、考慮した上で、最も良好だと思われる金融機関を選びましょう。依頼する建設業者によっては、あらかじめ金融機関と提携しているケースがありますので、提携している金融機関の中から選ぶと、借入れ交渉の手間が省けて便利です。

なお、建設業者が金融機関と提携していない場合には、次のような点を基準に選ぶと、最もメリットがある金融機関を選ぶことができます。

金融機関の選び方

融資を受けるための準備

公的金融機関や民間金融機関から借入れを行なう際には、事業計画に無理がないか、返済能力があるかどうかなど、クリアしなければならない要件が発生します。

融資の申込みをするにあたっては、次の項目を確認し、当てはまる物が少ない場合は、再度、事業計画を見直す必要があります。

融資を受けるための準備

融資に必要な書類

融資をスムーズに受けるためには、必要な書類をすべてきちんと揃えておくことが大切です。書類の提出漏れがあった場合には、審査が止まってしまい、融資決定が遅れてしまうことになります。

必要となる書類は、金融機関などによって異なりますが、一般的には次のような物になります。

融資に必要な主な書類

必要書類
不動産関連 □ 公図(写)
□ 不動産登記簿謄本(土地・建物)
□ 固定資産税評価証明書(土地・建物)
個人属性・
所得・納税関連
□ 住民票
□ 印鑑証明書
□ 健康保険被保険者証(写)
□ 所得証明書(住民税決定通知書)
□ 納税証明書
□ 確定申告書の写し(個人事業主・自営業者の場合)
□ 会社決算書(会社経営者の場合)
□ 他に借入れがある場合、その返済明細
図面・契約書関連 □ 配置図
□ 平面図、立面図
□ 工事請負契約書(写)
□ 工事費見積書(写)
□ 仮換地証明書(建設地が区画整理地の場合)
□ 地番該当証明書(建設地が区画整理地の場合)
□ 仮換地図(建設地が区画整理地の場合)
その他 □ 物件案内図
□ 金融機関用「事業計画概要書」
□ 団体信用生命保険契約加入申込書

東建コーポレーションでは土地活用をトータルでサポート。豊富な経験で培ったノウハウを活かし、土地をお持ちの方や土地活用をお考えの方に賃貸マンション・アパートを中心とした最適な土地活用をご提案しております。こちらのページでは、「土地活用 アパート経営ガイド アパート経営編」の「事業計画を立案する」から「アパート建築の資金計画」についてご紹介。「資金計画」は、返済期間や自己資金と借入金の割合に注意することがポイントです。どの程度の割合で自己資金を用意するのがベストか、自分に合った資金計画を立てましょう。