事例1 他に財産がない
A、B、Cの3人兄弟は、二次相続で母親から自宅の建物と土地を相続しました。他には多少の預金があったのみで、お葬式代や自宅の整理でなくなる程度の額です。
相続した際には、3人とも持ち家だったので家の処分について真剣に話し合うことはありませんでした。ただ、人が住まないと家が傷むと言うことで、水まわりのリフォーム費用をAが負担し、Aの長男Dが相続した家に住むことになりました。Dは家賃として月5万円をAに支払うことになりましたが、Aがそれなりの費用負担をしているので、BもCも特に異論はありませんでした。
そんな状態で数年が過ぎたころ、Bが失業し、Cの家族が病気になり、生活に困窮するようになったため、2人がAに対し、「家の賃料を自分たちにも配分しろ」と主張してきました。さらには、「身内に貸すより他人に貸した方がもっと賃料が入るだろうから、今すぐ出ていってほしい」と言いだしたのです。
結局、AがBとCに「ハンコ代(承諾を要する相手に支払うお金)」を払い、家をAの単独所有とすることで解決しました。

■ここが問題
共有状態を放置していたことが原因です。3人が同じ持ち分で共有しているので、Aだけの意思で賃貸を継続することはできません。万が一裁判になれば、Aの立場の方が弱いのです。この事例のように、相続開始時には誰も欲しがらなかった相続財産であっても、のちに事情が変われば「取れるところから取る」という相続人が出てくることは珍しくありません。
■対処法
相続時に費用負担や利益の分配について決めておくか、最初から単独所有にしておくのが良いでしょう。
「親が建てた家だから」「自分が育った家だから」ということで、不動産の処分をなんとなく先延ばしにしてしまう人も多いのですが、共有不動産は売ることも貸すことも他の相続人の同意を要するので、使い勝手が良くありません。時間が経つうちに、3人のうちだれかが亡くなってさらに相続人が増え、手に負えなくなることもあります。
単独所有にするための資力がなければ、不動産を売却してその利益を分配する「換価分割」という方法もあります。この場合も、相続人同士の協力が必要ですから、後回しにしないでしっかり話し合うことが大事です。

東建コーポレーションでは土地活用をトータルでサポート。豊富な経験で培ったノウハウを活かし、土地をお持ちの方や土地活用をお考えの方に賃貸マンション・アパートを中心とした最適な土地活用をご提案しております。こちらのページでは、「土地活用 アパート経営ガイド 相続編」の「争続事例」から「事例に見る不動産の相続争い」についてご紹介。不動産相続で起きる代表的なトラブルを2つ取り上げました。「財産が不動産以外にない」、「親の土地に兄弟の1人が家を建てたことで、土地を取り合う」など、事前に対策を取っていないと、身内で争いを招く結果となってしまいます。不動産は分割が困難な財産なので、相続人同士で話し合うことが重要です。