土地活用 アパート経営ガイド -税金編-

6.不動産を相続したときの税金

相続税の計算方法

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相続税の計算は、とても複雑です。しかし、相続税の計算方法や様々な控除について把握すれば、相続税対策として適切な土地活用方法や、相続税対策を行う場合に適正なアパート経営の規模などについての理解を深めることができます。
ここでは、相続税計算方法についてご紹介します。

各人の課税価格の計算

相続や遺贈、及び相続時精算課税の適用によって財産を取得した人ごとに、財産の課税価格を計算します。

まずは、財産を取得した人それぞれについて、「純資産価額(①)」を次の計算式で求めます。

純資産価額(①)

この「純資産価額(①)」に、「相続開始前3年以内の贈与財産の価額(※3)」を合わせたものが、「各人の課税価格(②)」になります。

各人の課税価格(②)

ただし、相続税はこの「各人の課税価格②」に税率をかけて求めるわけではないので、注意して下さい。一人ひとりの相続税額を求めるには、相続税の総額を求める必要があります。

※1 「みなし相続財産」にかかる相続税

民法上は本来の相続や遺贈によって取得した財産(いわゆる「本来の相続財産」)に該当しなくても、実質的に相続や遺贈によって財産を取得したことと同様な経済的効果があるものについては、相続税法では相続財産とみなされ、相続税の課税対象とされます。このような「みなし相続財産」のうち、主なものは以下の通りです。

・死亡保険金
ただし、「500万円×法定相続人の数」を控除した残額が課税対象となります。

・死亡退職金
ただし、「500万円×法定相続人の数」を控除した残額が課税対象となります。

・被相続人が保険料を払い込んだ生命保険契約に関する権利
相続開始時において、まだ保険金の支払い事由が発生していない生命保険契約は、解約返戻金の額が課税対象となります。

・被相続人が掛金または保険料を払い込んだ定期金に関する権利

・保証期間内に被相続人が死亡したことによる保証期間付定期金の給付を受ける権利

※2 相続時精算課税制度

相続時精算課税制度の届け出がなされて生前贈与を受けていた場合は、祖父母や父母の相続時に贈与を受けた財産額(贈与時の時価)を加算して相続税額の計算を行ないます。

また、その場合、すでに納付された贈与税額がある場合には、その贈与税額は相続税額から控除し、控除しきれない額は還付されます。

※3 相続開始3年以内の贈与財産の取扱い

相続や遺贈により財産をもらった人が、その相続開始前3年以内に、被相続人から贈与によって財産をもらったことがある場合には、その価額を相続税の課税価格に加算したうえで相続税の総額や各相続人の相続税額を計算します。

この場合、相続税の課税価格に加算された贈与財産に対して課された贈与税額は相続税額から控除されます。

相続税総額の計算

次に、相続税総額を計算していきます。法定相続人の人数に応じて控除額が変わるため、以下のような計算が必要になります。

1. 先ほど計算した「各人の課税価格②」を合計して、「課税価格の合計(③)」を計算します。

課税価格の合計(③)

2. 「課税価格の合計(③)」から「基礎控除額(※)」を差し引いて、「課税される遺産の総額(④)」を計算します。これにより、相続税の対象となる財産の総額が明らかになります。

課税遺産総額(④)

※基礎控除額

残された遺族の中には、その遺産でその後の生活をしなければならない人もいることを考慮して基礎控除を定めています。課税価格の合計が、基礎控除額の範囲内であれば、相続税は発生しません。

3. 「課税遺産総額④」を、各法定相続人が民法に定める法定相続分に従って取得したものとして、「各法定相続人の取得金額(⑤)」をそれぞれ計算します。これに基づいて、各人の相続税率をかけます。

法定相続分に応ずる、各法定相続人の取得金額(千円未満切捨て)(⑤)

4. 「各法定相続人の取得金額(⑤)」に「税率」をかけて、相続税の総額の基となる「法定相続人税額(⑥)」をそれぞれ算出します。

各法定相続人の算出税額(⑥)

5. 「各法定相続人の算出税額(⑥)」を合計して、「相続税の総額(⑦)」を計算します。

相続税の総額(⑦)

各人ごとの相続税額の計算

相続税の総額を、財産を取得した人の課税価格に応じて割り振って、財産を取得した人ごとが納付すべき相続税の金額を計算します。

まず、「各相続人等の相続税額(⑧)」の計算式は、以下の通りです。「各人の課税価格(②)÷ 課税価格の合計額(③)」は、各人が財産を受け取った割合を示しています。

各相続人等の相続税額(⑧)

最後に、「各種の控除」や「相続税の2割加算」について、該当するものを計算することで、「各相続人等の納付すべき税額(⑨)」を求めることができます。

各相続人等の納付すべき税額(⑨)

相続税の2割加算

財産を取得した人が被相続人の配偶者、父母、子ども以外の者である場合、税額控除を差し引く前の相続税額にその2割相当額を加算(相続税の2割加算)したあと、税額控除を差し引きます。

なお、被相続人の死亡以前に死亡した子の子(被相続人の孫)については、相続税額の2割加算をする必要はありません。

配偶者の税額軽減

配偶者に対する相続税については、同一世代間の財産移転であることや、長年共同生活を営んできた配偶者に対する配慮、被相続人死亡後の老後の生活の保障などの観点から、軽減措置が設けられています。

なお、この軽減税率は一定の書類を添付した申告書を提出した場合に限り適用が受けられます。

配偶者が実際に取得した遺産額が1億6,000万円まで、もしくは1億6,000万円を超えていても法定相続分までであれば、相続税はかかりません。

相続税の税率

相続税の税率は、8段階に分かれており、10%から最高55%までとなっています。

法定相続人の取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
1,000万円 超 3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円 超 5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円 超 1億円以下 30% 700万円
1億円 超 2億円以下 40% 1,700万円
2億円 超 3億円以下 45% 2,700万円
3億円 超 6億円以下 50% 4,200万円
6億円 超 55% 7,200万円

相続税額の計算例

最後に、具体的な数字を使って、相続税額の計算をしてみましょう。

次のような例で考えてみます。

相続人 … 妻、子2人

相続財産の総額 … 1億5,000万円

妻

子A

子A

子B

子B

相続財産の
取得割合
60%
(9,000万円)
10%
(1,500万円)
30%
(4,500万円)
法定相続分 1/2 1/4 1/4

課税遺産総額の計算

「各人の課税価格(②)」の合計である「課税価格の合計(③)」は1億5,000万円です。

ここから、基礎控除額を除き、「課税遺産総額(④)」を計算します。

課税遺産総額(④)

相続税総額の計算

ここから、各法定相続人の相続税額を計算していきます。

「課税遺産総額(④)」に法定相続分をかけて、「法定相続分に応ずる、各法定相続人の取得金額(⑤)」を求めます。この金額に応じて税率をかけて、控除額を差し引くことで、「各法定相続人の算出税額(⑥)」を求めます。例えば妻の場合、法定相続分は2分の1ですから、計算は次のようになります。

法定相続分に応ずる、妻の取得金額(⑤)、妻の算出税額(⑥)

2人の子どもについても、同様に計算します。

法定相続分に応ずる、子Aの取得金額・子Aの算出税額 法定相続分に応ずる、子Bの取得金額・子Bの算出税額

妻、子A、子Bの算出税額を合計すると、「相続税の総額(⑦)」を求めることができます。

相続税の総額(⑦)

各相続人の相続税額の計算

各相続人の相続税額は、相続税の総額(⑦)に、各相続人が実際に相続財産を取得した割合をかけることで求めることができます。

妻の相続税、子Aの相続税、子Bの相続税

ここで、妻には配偶者控除があるので、相続税額が1億6,000万円までであれば相続税はかかりません。

したがって、最終的に3人の納税額は下のようになります。

妻の納税額、子Aの納税額、子Bの納税額

以上が、相続税の計算方法です。

なお、今回の計算例では割愛しましたが、実際の相続税計算においてポイントとなるのは、相続財産の評価です。評価が間違っていると、その後の計算もすべて間違ってしまうので、不安な場合は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

東建コーポレーションでは土地活用をトータルでサポート。豊富な経験で培ったノウハウを活かし、土地をお持ちの方や土地活用をお考えの方に賃貸マンション・アパートを中心とした最適な土地活用をご提案しております。こちらのページでは、「土地活用 アパート経営ガイド 税金編」の「不動産を相続したときの税金」から「相続税の計算方法」をご紹介。相続税は、計算式が多数存在し、条件が合えば様々な「控除」が発生することもあり、非常に複雑です。特に、控除は金額が引かれるタイミングもそれぞれ異なるので注意しましょう。自分で計算ができると節税対策を行なう上での強みになりますが、不安な方は税理士などに相談するのもひとつの手です。