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アパートを相続したけど、現金などの遺産が少ないため、相続税が払えないというケースがあります。相続税は現金納付が原則であることから、納税用の現金が足りない場合、対応に窮することになります。でも対処法はあります。
相続税が払えないときの対処法は、主に「延納」と「物納」、「売却」の3つです。このうち延納や物納にはどのような要件があるのか、また、売却に関しては期限内で確実に売る方法も知っておきたいところです。
この記事では「アパートの相続税が払えないときの対処法」について解説します。
目次
延納(分割払いで納税する)
延納とは、相続税を分割払いして納税していく方法のことであり、延納を行うには、「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内」に税務署に延納することの申告をする必要があります。
延納の要件
延納は必ず利用できるとは限らず、選択するには以下のすべての要件を満たしていることが必要です。
《 延納ができる要件 》
- ・相続税額が10万円を超えること。
- ・金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること。
- ・延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること。(※)
- ・延納申請にかかる相続税の納期限または納付すべき日までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること。
※担保提供について、延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下である場合は不要です。
担保にできるもの
延納を行うには、原則として担保提供が必要ですが、担保にできるものは、以下のものに限られます。
《 担保にできるもの 》
- ・土地
- ・建物、立木、登記される船舶などで、保険に附したもの
- ・国債及び地方債
- ・社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
- ・鉄道財団、工場財団など
- ・税務署長が確実と認める保証人の保証
土地や建物は、原則として担保に提供することが可能ですが、例外的に以下のような不動産は担保提供できないものとされています。
《 担保にできない不動産 》
- ・売却について制限のある土地
- ・火災保険に加入していない建物
- ・違法建築物または土地の違法利用のために建物除去命令等がされているもの
- ・法令上担保権の設定または処分が禁止されているもの
- ・借地上の建物で担保物処分の際に借地権の譲渡についてあらかじめ地主の同意が得られないもの
延納期間と利子
延納できる期間は、課税相続財産に占める不動産の割合に応じて5~20年間と決まっており、延納する相続税額に対して利子税がかかる点も特徴です。 利子税は、延納期間や課税相続財産に占める不動産の割合等によって異なります。

こちらの記事で、延納の利子税や物納の要件について解説しています。
物納(金銭以外の財産で納税する)
物納とは、金銭以外の財産で相続税を納税する方法のことです。
物納は、相続税の現金一括納付ができず、延納して納税することも困難な場合に選択することができます。
物納にも申告期限があり、「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内」に税務署に物納の申告をすることが必要です。
物納の要件
物納は、以下のすべての要件を満たしている場合に利用できます。
《 物納ができる要件 》
- ・延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、
かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること。 - ・物納申請財産が定められた種類の財産で申請順位に物納申請財産が定めた種類の財産で、申請順位を満たしていること。
- ・申請書及び物納手続関係書類を期限までに提出すること。
- ・物納申請財産が物納適格財産であること。
物納に充てることのできる財産には、申請順位が存在します。
申請順位は下表の通りです。
《 物納に充てることのできる財産の申請順位 》
種 類 | 物納に充てることのできる財産の種類 |
---|---|
第1順位 | 不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等(特別の法律により法人の発行する債券及び出資証券を含み、短期社債等を除きます。) |
不動産及び上場株式のうち物納劣後財産(※)に該当するもの | |
第2順位 | 非上場株式等(特別の法律により法人の発行する債券及び出資証券を含み、短期社債等を除きます。) |
非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの | |
第3順位 | 動産 |
※物納劣後財産とは、物納に充てることのできる順位が後れるものとして取り扱う財産
不動産は第1順位に該当しますので、物納要件を満たす不動産を持っている場合には物納に充てることができます。
物納できない不動産
物納できない不動産の要件は細かく定められています。
以下のような不動産は、物納できない財産とされています。
《 物納できない不動産 》
- ・担保権の設定の登記がされていることその他これに準ずる事情がある不動産
- ・権利の帰属について争いがある不動産
- ・隣接する不動産の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産
- ・境界が明らかでない土地
- ・他の土地に囲まれて公道に通じない土地で民法第210条(公道に至るための他の土地の通行権)の規定による通行権の内容が明確ではないもの
- ・借地権の目的となっている土地で、その借地権を有する者が不明であることその他これに類する事情があるもの
- ・他の不動産と社会通念上一体として利用されている不動産もしくは利用されるべき不動産または二以上の者の共有に属する不動産
- ・法定耐用年数を経過している建物(通常使用ができるものは除く)
- ・敷金の返還にかかる債務その他の債務を国が負担することとになる不動産
- ・その管理または処分を行うために要する費用の額がその収納価額と比較して過大となると見込まれる不動産
- ・公の秩序または善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている不動産その他社会通念上適切でないと認められる目的に使用されている不動産
- ・引渡しに際して通常必要とされる行為がされていない不動産
- ・地上権、永小作権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利が設定されている不動産
物納不動産の価格
物納財産は、基本的に相続人にとって金銭納付より損となります。物納不動産の評価は、原則として相続税の課税価格計算の基礎となった価額と同額となり、時価よりも低いことが通常であるためです。
さらに、相続税評価額を引き下げる効果のある小規模宅地の特例等の適用を受けた相続財産を物納する場合、収納価額は特例適用後の価額となるため、さらに損となります。
売却(相続物を売却して納税する)
アパートのような一定の購入需要が存在する不動産は、売却して得た現金によって納税する方法も考えられます。売却するアパート(建物)のメンテナンスが行き届いており、入居状況も良好であれば、収益物件として売却できる可能性があります。
ただし、相続税の申告と納税の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内となるため、期限までに売却を完了し、現金化する必要があります。
早めに仲介を検討する
不動産を高く売るには、仲介による売却を選択する必要があります。
不動産の売却には、一般的に不動産屋に買い取ってもらう「買取り」と不動産屋に買い手を探してもらう「仲介」があります。仲介の場合は市場価格で売れるため、高く売却できるメリットはありますが、売却までに時間がかかる点がデメリットです。
買い手探しから売却の完了まで、6ヵ月程度の時間を見込んでおく必要がありますので、相続から10ヵ月以内に売却するには、遅くとも相続後、3~4ヵ月以内には売却活動をスタートさせた方がよいでしょう。
時間がない場合は買取保証も検討する
納税期限までに売却するには、買取保証も検討することをおすすめします。
買取保証とは、一定期間を仲介で売却することを試み、期限まで売却できなかったら最後は不動産会社に買い取ってもらうという売却方法のことです。買取保証は、期限内に確実に売却できる点がメリットですが、買取になってしまうと売却価格が安くなる点がデメリットとなります。買取による売却価格は、概ね仲介による売却価格の80%程度です。
買取保証は、できれば仲介によって高く売却したいけれども期限内に確実に売却しなければならない人に適した売却方法と言えます。
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以上、アパートを相続したけど相続税が払えないときの対処法について解説してきました。相続税が払えないときの対処法は、主に延納と物納、売却の3つで、いずれも手続きや売却には期限がありますので、相続を開始したら早めに対策していただければと思います。東建コーポレーションでは、「東建税理士交流会」を組織し、全国の提携税理士と連携を図ることでオーナー様の土地活用を通して最適な節税対策のご提案をさせていただいております。
ぜひ、土地活用コンサルティングをご提供する東建コーポレーションにご相談ください。


